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植松侑子の「来なきゃ分からないことだらけ from ソウル」Vol.1

12.05/13

Nextさんにこのたび機会をいただいて、毎月コラムを執筆させていただくことになりました植松と申します。これからどうぞよろしくお願いいたします。

私は昨年までフェスティバル/トーキョー(F/T)にて制作スタッフとして働いていました。

その中でもF/T公募プログラムや批評家・イン・レジデンスなど主にアジア関係のプログラム関わらせていただいていたのですが、なぜ私がアジア担当であったかというと理由は結構シンプルで、F/T入社前にひとりバックパッカーとして南アジア、東南アジアを放浪していた時期があったからです。だからもともとアジアに対する興味と関心は比較的強かったのですが、4回のフェスティバルを通じてアジアとどう向き合うかについて考え続けたことが今の自分につながっていると思います。

今年から韓国のソウルに住んでいます。

なぜ韓国か、というとK-POPと韓流ドラマが好きだからという邪な理由はさておき、F/Tにいた期間アジアの演目を担当する中で、やはり言語の壁を感じ続けていたことがまず理由のひとつです。
いくらネット社会とはいえ非英語圏の国において、英語でリサーチできる情報には限界があります。
仮に良い作品・アーティストに出会えたとしても、そのアーティストの国内での評価や過去の作品の批評など、掘り下げようとするとすぐに言語の壁にぶつかります。
まだ出会ったことのない人たちにリーチするにはやはり言語を身につけなくては、という思いがF/T公募プログラムが立ち上がったあたりから切実に感じていたことでした。

また、もう一つの理由として、現在の韓国の舞台芸術界の変化の早さがあります。
みなさんもご存じのとおり韓国は今、国策として文化に力を入れています。平成23年度の情報はまだ見つからなかったのですが、平成22年2月に文化庁から出された資料(http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/50/pdf/shiryo_10.pdf)によると、「国家予算に占める文化予算の割合」は日本が0.12%(1018億円)に対し、韓国は0.79%(1389億円)。
この時点ですでに日本は韓国に抜かれていますが、さらに平成23年の韓国の文化予算は約2567億円(3兆4500億ウォン)と発表されているので、1年での伸び率は約84.8%になります。
ちなみに日本の平成23年度の文化予算は1031億円だったので伸び率は約1.2%、額にしても2倍以上と大きく差がついています。

この文化予算の伸び率でも窺い知れる通り、今、韓国の舞台芸術界は現在進行形で目まぐるしく変わっています。
2014年にはアジアの文化交流・創造のハブになることを目的に「国立アジア文化の殿堂」(http://www.cct.go.kr/english/index.do)が光州にオープンします。この中に建設される「アジア芸術劇場」の芸術監督にフリー・レイソン(Frie Leysen)が就任したことも先月発表され、国内外の注目を浴びました。耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?

以上二つの理由があり、とりあえずはもう現地に行くしかない、と腹をくくり今年の1月に単身韓国へやってきたというわけです。

みなさんももしかすると、「今韓国にはこういう制度があるらしい」「こういう傾向があるらしい」と韓国の情報をどこかで聞いたことがあるかもしれません。こちらに来てみると、それが正しいこともあれば間違っていると気づくこともあります。ただ重要なのは、なぜそうなったのか韓国社会そのものの仕組みや文脈を踏まえなければ、現在の韓国の舞台芸術界の状況も正しく理解できないのではないか、ということです。

日本にはまだ無いような制度や組織や支援システムもあり、日本にいたときはそれがうらやましくもありましたが、来てみると別の側面が見えてきたことも多々あります。これから、このコラムを通して、韓国の今をみなさんにお伝えできればと思います。

ちなみに、私は現在どこかの劇場や組織に所属しているわけではなく、いきなり「フリーランスの舞台芸術制作者」として韓国で生活しています。かなり無謀だと思いますが、来てしまった以上は頑張りたいと思います。これからどうぞよろしくお願いいたします。



■植松 侑子(うえまつ・ゆうこ)■
1981年、愛媛県出身。お茶の水女子大学芸術・表現行動学科舞踊教育学コース卒業。在学中より複数のダンス公演に制作アシスタントとして参加。卒業後は制作、一般企業、海外放浪を経て、2008年6月よりフェスティバル/トーキョーに参加。F/T09春、F/T09秋、F/T10は制作スタッフとして、F/T11は制作統括として4回のフェスティバルに携わる。 2012年よりソウル在住。
個人ブログ:http://maticcco.blogspot.com/
twitter:@maticcco


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