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矢作勝義の「劇場オープンまでの長い道のり from 豊橋」Vol.8

12.12/23

12月に入り、街中はイルミネーションが光輝き、きらびやかな雰囲気を醸し出しています。ここに来て寒さがさらに一段階厳しくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。豊橋でも、駅前はイルミネーションですっかりライトアップされています。

豊橋は、気温は比較的温暖だと言われているのですが、風が強いのが特徴です。先日も、開設準備事務所のある場所がちょうど風の通り道のようで、窓ガラスが割れてしまうのではないかとヒヤヒヤする程でした。自転車通勤の際の服装も一段階グレードアップして防寒対策しています。自転車に乗っている分には運動しているようなものですから、自分の体温で体が温まるのでなんとかなるのですが、事務所の床がフローリングのため底冷えがひどく、私個人は足首の冷えに苦労しています。ヒートテックのような下着系のものは、蒸れるため得意ではなく、レッグウォーマーか着脱しやすいオーバーパンツなど手頃なものがないかと物色したのですが。レッグウォーマーは女性物ばかりで、ジーンズの上から付けるには細すぎて、丁度良いものがなく、オーバーパンツも両サイドがジッパーになっていて、靴を脱がなくても着脱できるようなもので手頃なものはなく寒さに震えています。どなたか値段も含めて手頃なものをご存じありませんか?

さて、劇場の建設は着々と進んでいます。ようやく人が普段通行する道路側にあった作業用の足場が撤去され、レンガの壁面など全体像が見えるようになってきました。

レンガとガラスのコントラストが美しく、このガラス面が、アートスペース(小劇場)の1階・2階の客席ホワイエになります。ここから見る風景もなかなか風情があり、アートスペースでの催物がないときは、ロビーを開放して陽にあたりながらお弁当など食べたり、お散歩コースの一部に出来たりすると良いのではないかと考えています。内装も着々というよりどしどし進んでいます。それとともに、照明機材と舞台機構卓の工場検査がありました。照明は、二つの劇場に設置される調光卓と灯体などの照明機材類の検査でした。照明部門は松村電機が担当しています。調光卓の本体はコンピューター卓ですが、高校演劇部の顧問先生から要望があり、昔からある三段プリセットフェーダーでの操作もできるようなタイプのユニットも設置されます。

世田谷パブリックシアター・シアタートラムの調光卓はどちらかというとフェーダー数が多くないタイプでしたので、ちょっと新鮮というか懐かしい感じです。また、二つの劇場および創造活動室A・B(稽古場兼公演施設)とも共通の移動型調光器システムが導入され、非常にフレキシブルに照明のセッティングが可能です。非常に高いポテンシャルをもったシステムですが、どれだけ有効に活用出来るかは、劇場スタッフの技量にもよるのかもしれません。

そして機構卓はカヤバ・システム・マシナリーの舞台機構卓が導入されます。

この機構卓は、世田谷パブリックシアターを始め、KAAT、いわきアリオスなど幾つもの劇場で導入されているものです。主ホールは、昇降バトンの数も多く、それらの制御も完全コンピューター化され、この操作というものが劇場の舞台担当者の重要な仕事になります。劇場の舞台技術スタッフの仕事としては、音響と照明の業務内容については、劇場を利用する音響・照明スタッフからでも、劇場スタッフの仕事内容は、共通する部分が多く比較的理解されやすいと思います。舞台機構については、コンピューター制御の舞台機構設備が整った劇場を利用するスタッフは分かると思いますが、小劇場ではまず機構卓そのものが設置されていないところが大半でしょうし、舞台監督業務とも異なるなど、劇場の舞台機構スタッフの役割や業務の範囲などなかなか理解されにく部分があるかもしれません。

そして、財団としては、二兎社「こんばんは、父さん」公演が豊橋市民文化会館で2ステージ上演されました。佐々木蔵之介、溝端淳平、平幹二朗という魅力的な俳優の出演と、永井愛さんの新作ということもあり、2ステージが早々に完売という人気の公演でした。近隣の知立や長久手の劇場で上演もありましたが、そちらも早々に完売し、そこで購入できず、発売が少し遅めだった豊橋でチケットを入手し足を運んだ方もいたようです。今回のツアー会場としては、豊橋が一番小さな劇場(約500席)だったようです。豊橋市民文化会館を初めて訪れた方が、“最後列からでも舞台が近い”と思わず声をだしているのが聞こえました。そして新しい穂の国とよはし芸術劇場主ホールも、客席数に対してコンパクトな作りになっています。

写真は、建設中の主ホールの舞台側から客席側を写した写真です。まだ、段床を含めて客席が設置されていないので分かりにくいのですが、写真の真ん中に見えるガラスが入っているブースが音響調整室で、ここが1階客席の最後部になります。そこまでの距離が、舞台最前面から約20メール。世田谷パブリックシアターの舞台最前面から1階最後列までの距離が約17.5メートル。客席数は、世田谷が600席に対して、豊橋は780席ですから、収容人数に比しても非常にコンパクトな作りになっているかと思います。この点は、劇場の売りだと思っています。

劇場運営の準備についても一つ大きな結果がでました。穂の国とよはし芸術劇場は、豊橋文化振興財団が非公募で指定管理提案書を提出していましたが、先日指定管理者候補として選定され、あとは12月の議会での審議・議決を待つという状況になりました。豊橋市のHPに情報が掲載されています。

それと、11月中旬に市長選があり、現職市長が再選となりましたので、安心して準備を進めることができる条件が揃いました。

今年も残すところ1ヶ月。開館後の事業の準備も具体的にすすめていかなければならない時期になりました。ここから年末までもう一踏ん張りして新年を迎えたいと思います。

少々気が早いかもしれませんが、それでは皆様良いお年を。



■矢作 勝義(やはぎ・まさよし)■

1965年生まれ。東京都出身。公益財団法人豊橋文化振興財団『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』事業制作チーフ。東京都立大学(現・首都大学東京)演劇部「劇団時計」から演劇に本格的に関わる。卒業後は、レコーディング・エンジニアを目指しレコーディングスタジオで働き始めるが、演劇部時代の仲間と劇団を旗揚げするため退職。劇団では主宰、演出、音響、制作、俳優を担当。ある忘年会で、当時世田谷パブリックシアター制作課長だった高萩宏氏(現東京芸術劇場副館長)に声を掛けられ、開館2年目にあたる1998年4月から広報担当として勤務。その後、貸館・提携公演などのカンパニー受入れや劇場・施設スケジュール管理を担当するとともに、いくつかの主催事業の制作を担当した。主な担当事業は、『シアタートラム・ネクストジェネレーション』、『リア王の悲劇』、『日本語を読む』、『往転-オウテン』など。また、技術部技術運営課に在籍したり、教育開発課の課長補佐を務めるなど、世田谷時代は劇場の何でも屋的な存在としても知られた。2012年3月末をもって世田谷を退職し、2013年5月オープン予定の“穂の国とよはし芸術劇場PLAT”の開館準備事務所にて事業制作チーフとして勤務中。


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