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矢作勝義の「劇場オープンまでの長い道のり from 豊橋」Vol.7

12.11/13

11月に入り、ぐっと寒さが増してきましたが、いかがお過ごしでしょうか。気候の変化に体が追いつかず、体調を崩しやすくなるかと思いますので、皆様お気を付けてお過ごし下さい。豊橋は、気温は温暖なのですが、風が強いため体感温度が少し低めです。11月に入ったところで、グッと気温も下がり、更には風が強くなり朝・晩の自転車通勤に明らかに影響が出ています。向かい風による数分のロスは否めません。開設準備事務所も日当たりが悪いうえに、フローリング床のため底冷えしています。今後の状況を考えると、事務所こそが寒さ対策が必要かと感じています。

さて、2013年4月30日(火)に開館する『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』の準備ですが、ここに来て建設用の足場が撤去されはじめ、外側も内側も建物の姿形が具体的に見ることが出来るようになりました。オープンに向けての期待感がますます高まってきました。特に、線路側のレンガ壁の覆いの一部がなくなり、イメージ図でしか見ることのできなかった姿が実物を見せ始めました。写真は、新幹線の豊橋駅ホームの一番東京よりから撮影したものです。もし、東京から西に向かう場合は、豊橋駅に着く前に見えます。駅を通過してからでは見えませんのでご注意ください。

ちょっと見えにくいのですが、レンガ壁の左肩の所に大きく劇場名サインも表示されています。このレンガが劇場全体の基調となっており、アートスペース(小劇場)の内壁や、そのほか建物の廊下などもレンガ壁になっています。それとは異なり、主ホールの客席壁面は日本の伝統色などを使ったカラフルなものになっています。下側から照明が当たるようになっているので、調整により様々な表情を見せてくれるはずです。上演中は暗闇に沈むけど、開場中などのお客様を迎え入れるときは、手筒花火の吹き上がる炎のように見えたりして、開演前の雰囲気を盛り上げるなど、使う人によってコントロール出来る遊び心が用意されています。

建設現場も遅くまで作業が続いていますが、建物ができた後のことも続々と準備を進めています。先日は室内の備品と館内サインの確認打合せを連続して行っていましたらノンストップで9時間ほどかかりました。両方とも、建物が完成しているわけではない状態で判断する必要があり、様々なケースを頭の中で想定し、また、費用や諸々の制約があるなかで、その場で決めていくということが必要でした。特にお客様が利用するスペースに関しては、世田谷パブリックシアター時代の経験だけでなく、自分が行ったことのある劇場のことを思い出しながら考え、このスペースはどう使われることが必要なのか、そのためには何が、またどのような表示が必要なのかを頭の中で組み立てていきます。もちろん私だけでそれを考えているのではなく、香山デザイン事務所の臼井さん、樋口さんという建設現場に常駐している担当者のお二人や、舞台技術チーフの高瀬さんとも相談しながら検討していきます。そうすることにより、様々な経験の中からこの劇場にふさわしい形を作り上げていっています。

さて、オープニングに向けての公演関係の準備ですが、ちょうどこの8月下旬〜10月頃というのがどこの公共劇場でも同じだと思いますが、設置自治体への予算要求の時期にあたり、ここでほぼ次年度の事業が決まります。要求すればそれがそのまま認められるというものではありませんので、その後の状況では計画を変更しなくてはならない場合もでてきますが、その前までに次年度事業については具体的に決めていくという時期でもあります。また、11月に入り開館まであと半年となり、豊橋市内を走る路面電車に「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」ラッピング電車がお目見えとなりました。

11月3日(土・祝)に、出発式を行いました。そこには、市長とともに、芸術文化アドバイザーの平田満さんもテープカットに参加し、新しい劇場への期待を高めていました。豊橋市民の方々にも、いよいよ劇場がオープンするということを意識して貰い、期待を高めて貰えることでしょう。また、前半部分の主なプログラムを紹介するチラシなども作成し、いよいよ開館にむけてのカウントダウンが始まったといったところでしょうか。

この時期は、様々な事業も目白押しです。前回にも紹介しました、子ども造形パラダイスでの美術ワークショップ「アトリエjiwaの楽しい町づくりワークショップ」は10月19日(金)に準備し、20日(土)に本番を行いました。展示物の搬入や設営は18日(木)に行われていたのですが、この日が台風の影響もあり大雨だったので、どうなることやらとヒヤヒヤしていました。19日の早朝はまだ雨が残っていましたが、太陽が出る頃には雨も上がり、準備も予定通りに進み、本番当日も快晴で、多くのこどもたちに参加して貰えました。他にもモノづくりのワークショップも行われており、こちらも大賑わいでした。この日は豊橋まつりという豊橋市内の一大イベントがあり、同じ豊橋公園の別な会場では、豊橋市の大工組合が、本棚や椅子などのものづくりコーナーなども行っており、豊橋市の人たちは結構ものづくりが好きな人というか子ども達が多いのではないかと感じました。これも、実は造形パラダイスを長年実施している影響なのではないかと思ったりしました。

この他、市内の名門小学校である八町小学校の3・4年生を対象にした演劇ワークショップ。これは、世田谷パブリックシアターでもファシリテーターを務めているすずきこーたさんに講師をお願いして実施しました。学校としては演劇ワークショップを行うこと自体が初めてだということで、小学校との調整にはなかなか時間がかかりましたが、結果としては次に繋がるような良いものになったかと思っています。劇場が出来る意味というものが、こうしたことに上手くつなげられるようにしていきたいと考えています。

また、音楽ワークショップも、豊橋市としてはちょっと中心部からは離れた玉川小学校というところへ出向いて実施しました。リコーダーの吉澤実さんとリュートの永田平八さんによるミニコンサートと小学校3・4年生を対象としたリコーダーワークショップです。劇場が駅前にあるために、距離的に劇場に来ることが難しい子どもたちに向かいどのようにアプローチするのかという課題にも繋がると考えています。

本年度のワークショップ関係はこれで終了ですが、劇場がオープンしたらさらに拡大していきたいと考えています。

前回告知をしていました、新劇場のスタッフ募集ですが、お陰様で多くの方からご応募いただきました。財団スタッフの中にはそんなに応募がないのではないのではないかと心配している人もいましたが、その予想を超える方々からの応募がありました。やはり豊橋や近隣地域の方が中心ですが、東京やその他の地域からもご応募いただきました。これ以上は書けませんが、決まりましたら是非このコラムでも新しい劇場のスタッフを紹介したいと考えています。



■矢作 勝義(やはぎ・まさよし)■

1965年生まれ。東京都出身。公益財団法人豊橋文化振興財団『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』事業制作チーフ。東京都立大学(現・首都大学東京)演劇部「劇団時計」から演劇に本格的に関わる。卒業後は、レコーディング・エンジニアを目指しレコーディングスタジオで働き始めるが、演劇部時代の仲間と劇団を旗揚げするため退職。劇団では主宰、演出、音響、制作、俳優を担当。ある忘年会で、当時世田谷パブリックシアター制作課長だった高萩宏氏(現東京芸術劇場副館長)に声を掛けられ、開館2年目にあたる1998年4月から広報担当として勤務。その後、貸館・提携公演などのカンパニー受入れや劇場・施設スケジュール管理を担当するとともに、いくつかの主催事業の制作を担当した。主な担当事業は、『シアタートラム・ネクストジェネレーション』、『リア王の悲劇』、『日本語を読む』、『往転-オウテン』など。また、技術部技術運営課に在籍したり、教育開発課の課長補佐を務めるなど、世田谷時代は劇場の何でも屋的な存在としても知られた。2012年3月末をもって世田谷を退職し、2013年5月オープン予定の“穂の国とよはし芸術劇場PLAT”の開館準備事務所にて事業制作チーフとして勤務中。


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