制作ニュース

矢作勝義の「劇場オープンまでの長い道のり from 豊橋」Vol.6

12.10/13

いつのまにやら10月。秋の空になってきたものの、日中はなんだか暑い日が続き、体調管理もままならない日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、豊橋に来て既に半年。まだまだ半年とも言えますが、あっという間に時間は過ぎていきます。前回も告知しましたが、正式に『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』の新規採用スタッフ募集が始まりました。詳細は豊橋文化振興財団のHPの「平成25年度採用 嘱託員募集(PDF形式)」をご参照ください。

少し分かりにくいところを補足します。募集職種は、舞台技術スタッフと制作スタッフです。舞台技術スタッフとしては、舞台、照明、音響の各セクション。制作スタッフは、劇場(財団)としては自主制作公演や教育普及事業などを実施していきますが、様々な形で施設をご利用いただく貸館を行いますので、その受入担当業務、広報、チケット、営業などの業務をそれぞれの適正に応じて担当していただくことになります。新規開館にあたっての募集ですので人数は複数人採用予定です。劇場での勤務経験や、劇団やカンパニーで演劇・舞踊などの舞台作品の制作経験がある方だけでなく、経験はなくても大学などでアートマネージメントを学び、公共劇場で働くことを希望している新卒の方や、一度は就職したけどやはり劇場で働きたいと考えている第二新卒の方も対象としています。開館は、2013年4月30日になりますが、準備のために2013年2月1日から採用という条件になっています。しかし、年度の途中からの採用なので、新卒の方など2月からフルタイムが難しい方でも、必要な人材ならば状況に応じて検討します。新しい劇場の仕事は、本当にゼロからのスタートです。私自身は劇場での勤務経験はありますが、既存の財団スタッフはいわゆる劇場運営業務は担っていなかったこともあり、特段のアドバンテージはないと考えています。本当にゼロからのスタートです。既存のルールや手段があるのではなく、それ自体を一緒に考え、行動してくれる人が応募してくれることを期待しています。この件についての質問などあれば、お気軽にお問い合わせ下さい。

この話はこのあたりで切り上げて、劇場の現況について話題を変えましょう。徐々に建物の容貌が見え始めました。まだまだ、ネットなどで覆われているので写真では写りにくいのですが、外装の特徴であるレンガの壁が見えてきました。また、写真では解りにくいのですが、建物左側のアートスペース(小劇場)ロビーのガラスがはめ込まれるなど、内装関係の工事も順調に進行しています。

この先、躯体関係の大きな工事が終わってくると、様々な細かい機器が設置されることになります。その機器の納入前の工場検査というものに行ってきました。一つは主ホールとアートスペースに納入される音響機器です。アンプやミキサーなどヤマハやローランドなどの市販製品が使用されるのですが、それを音響室や機械室に設置するため専用台を用意したり、ラックマウントしたり、実際に劇場に設置されるのと同じ状況での動作確認や性能確認などを行いました。劇場という場所では、単純に物量が多かったり、ノイズや発熱の問題などから、音響機器が全て同じ場所に設置されるのではなく、アンプ類などはアンプ室などの別室に設置されます。そのため、全ての音響機器の電源のオン・オフを音響室で一括で操作出来るようにするとか、数多くあるスピーカーの切替を音響室と舞台袖で操作できるようにするとか、事前に想定されていた通りに機器類が動作するかを確認しました。実際の動作や配置などを確認し、修正点などを指摘し、納入前までに改善してもらうことになりました。最終的には、劇場に設置された時に、同じように動作し、同じような性能を発揮してもらうことが重要なのですが。

それと、アートスペースに設置されるロールバック式の客席試作品検査もありました。写真は、その工場へ行く際に、地元の人ぐらいしか通らないような豊川沿いの道から撮った豊川です。写真には写っていませんが鮎釣りをしている人の姿がありました。
実際の製作作業に入る前に、試作品を見て、仕様や形状、色などの確認や実際に座ったり動いたりして座り心地や、足下の広さの確認、床面振動の状況などを確認しました。通路を移動しても、振動はなく非常に堅牢な構造でした。この点は後発の劇場として有利な点で、これまでの実績から様々な改良が加えられてこうなっているとのことでした。
客席の足下も余裕があり、座面と背もたれの形状や材質も工夫されており優れた座り心地が期待できます。椅子の好みは個人差が大きく、難しいところではありますが。また、座面の布地の色は既に決定していましたが、床面のカーペットの色やその他の部材の色や材質などをここで確定していきました。最終的には、修正点と改善の検討点などを確認しました。これで、客席製作必要部材の手配をすることが確認されました。
今後、照明調光卓や機構操作卓などの検査が予定されていますが、この検査の段階で具体的な指摘や改善が出来ていれば、実際に建物に納品されてからでは修正できないこともあるので、この場に立ち会い、その場で具体的に使用する際の状況をイメージし、改善点や不明点を指摘できることが重要だと思いました。
これらの検査は、設計・デザイン担当者や施工担当者、
それぞれのセクションのコーディネーター、豊橋市の責任者、舞台技術チーフといった方々も同行し、検査していますので、私が単独で決めているものではありません。多くの人の意見を取り入れながら、より良い劇場になるように、準備は進んでいます。
検査時の写真もあるのですが、納品前なのでまだ一般公開はちょっと控えて、代わりに豊橋の夕焼けの写真をどうぞ。

9月上旬までは豊橋のノンビリした空気に馴染んでいましたが、流石にここまでくると、具体的な検討事項や作業事項が増えてきたこと、次年度つまり劇場がオープンした年に行う事業に関して、助成金の申請書類の作成や、予算書の作成などの準備も始まり、書類作成に追われ始めました。いよいよ、エンジンのギアを切り替えてスピードアップするタイミングになったかと思います。



■矢作 勝義(やはぎ・まさよし)■
1965年生まれ。東京都出身。公益財団法人豊橋文化振興財団『穂の国とよはし芸術劇場PLAT』事業制作チーフ。東京都立大学(現・首都大学東京)演劇部「劇団時計」から演劇に本格的に関わる。卒業後は、レコーディング・エンジニアを目指しレコーディングスタジオで働き始めるが、演劇部時代の仲間と劇団を旗揚げするため退職。劇団では主宰、演出、音響、制作、俳優を担当。ある忘年会で、当時世田谷パブリックシアター制作課長だった高萩宏氏(現東京芸術劇場副館長)に声を掛けられ、開館2年目にあたる1998年4月から広報担当として勤務。その後、貸館・提携公演などのカンパニー受入れや劇場・施設スケジュール管理を担当するとともに、いくつかの主催事業の制作を担当した。主な担当事業は、『シアタートラム・ネクストジェネレーション』、『リア王の悲劇』、『日本語を読む』、『往転-オウテン』など。また、技術部技術運営課に在籍したり、教育開発課の課長補佐を務めるなど、世田谷時代は劇場の何でも屋的な存在としても知られた。2012年3月末をもって世田谷を退職し、2013年5月オープン予定の“穂の国とよはし芸術劇場PLAT”の開館準備事務所にて事業制作チーフとして勤務中。


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