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拠点持ちアーティストの理想と現実-トーク・レポート-

15.07/17

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「『好きなようにやってください』とつくってもらった」(広田さん)

他方、「私は皆さんと比べて、強い思い入れも苦労もなく拠点を獲得してしまったので・・・」というのは、池袋駅徒歩7分の「スタジオ空洞」の運営委員長を務める、広田淳一さんだ。主宰する劇団「アマヤドリ」が同スタジオを拠点とし、かつ運営(貸出受付、補修など)を行っている。「大家にあたる方から、『どうぞ好きなようにやってください!』というノリで話が進んで、つくってもらった次第です」というから驚きだ。「大家さんの気分次第のようなところもあるので、逆に怖くもありますね」ともコメント。2013年にオープンし、当初は稽古場貸出を想定していたが、本番会場として利用されるケースも多いという。

 

「利害が対立しそうなひとには、まず会いに行く」(倉迫さん)

「にしすがも創造舎」の一室に10年近くレジデンスしてきたのは、「Theatre Ort」主宰の倉迫康史さん。今年10月にオープンする「たちかわ創造舎」のチーフ・ディレクターに就任した。両施設ともに、廃校利用の文化芸術活動拠点だ。これまでの経験を踏まえ、「旧小・中学校は、地元の人の想い入れが強く、最初から公共性を帯びているといえます。地域と繋がっていくことが求められる中で、『利害が対立しそうなひとには、まず会いに行く』というのが大切だと学びました」と語った。その上で「公共性を獲得する為には、地域の課題を発見することが必要」だという。「それは難しいことではなく、まずは井戸端会議レベルの内容でも良いのだと思っています」。

 

拠点を持つメリット、運営費用の考え方

それぞれの紹介を経た後、進行役の佐伯さんから「拠点を持つことのメリット」が問われた。竹田さんは「劇団員がなんとなく家族のようになってきた。拠点があたかも家のように感じられて、共同体意識が強まった」という。広田さんも「(スタジオ所有より先に)事務所を構えてから、全員の心の持ちようが変わった。劇団会議の頻度もあがり、『止まっている業務に気が付かない』ことが無くなった」と語る。佐伯さんも「久しぶりにこのスタジオに来て『時間堂がより劇団っぽくなった』ように感じた」という。「劇団員の皆さんが、暗黙の何かを共有できているようで、良い時間が流れているなと感じました」。

佐伯風土さん

佐伯風土さん(SPAC)

会場からの質疑応答では、劇団「NICE STALKER」主宰のイトウシンタロウさん(今年3月に東京・中野に拠点を構えた)より、運営費用の考え方について/劇団員のモチベートについて、質問が寄せられた。

大森さんは、「時間堂は拠点立ち上げと同時期に、劇団を法人化したのですが、社員は黒澤と私だけで、劇団員には業務に応じて報酬を払うという形でやっています」という。一方、広田さんは「アマヤドリでは、俳優から『ギャラは欲しいが、俳優の仕事以外での仕事の対価を受け取るつもりはない』と言われました」とのこと。

広田さんは続けて、「そもそも『演劇をやる』というのは、経済の原理とは関係ないはずなんです。儲からないことはハッキリしている訳で、資本主義的なビジョンでは語れないと考えています。資本主義的・効率至上主義的な枠組みで、物事や世界を捉えてしまいがちですが、それとは関係ないところにも個人はあるし、世界はあるはず」と、持論の哲学を語った。


時間堂主宰の黒澤さんはblogの中で、「当たり前ですが、ほんとうにみなさん多くの苦労をなさってるんですが、基本的には明るい笑い話になってるんですよね。そこがリーダーとしてさすがだなあ、と感服したところでした」と、今回のトークを振り返っています。そういう黒澤さんも含めて、「拠点を持つ」という決断をされた方々ならではの、ポジティブなトーク・イベントでした。(編集部:芳山徹)

【こちらもチェック!】
◇『城を持ったアーティスト』5人のその後|黒澤世莉のブログ
◇ 時間堂スタジオリノベーション(および劇団法人化)の記録 

【合わせて読みたい!】
◇ 昨年6月開催、「時間堂スタジオ・オープニングイベント」スペシャルトークのレポート 
◇ 台東区・北区・立川市で誕生、廃校活用による「文化芸術活動拠点」〜立川市「たちかわ創造舎」編〜

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