制作ニュース

『地域のシテン』第6回前編 平松隆之ほか

14.08/11

静岡から社会と芸術を考える合宿ワークショップ
レポート&インタビュー
「劇場が行う対話型ワークショップの可能性」(前編)

制作手帖×ON-PAM地域協働委員会 リレーインタビュー「地域のシテン」第6回
ゲスト:平松隆之(劇団うりんこ)/白川陽一(Keramago Works)/平田大(公益財団法人静岡県舞台芸術センター)
取材・文:藤原顕太(Next/ON-PAM地域協働委員会会員)

制作手帖とON-PAM地域協働委員会がコラボレーションして不定期でお贈りしているインタビューシリーズ『地域のシテン』。今回は、昨秋静岡県舞台芸術センター(SPAC)で実施されたイベント「静岡から社会と芸術を考える合宿ワークショップ まちと劇場と祝祭と Dialogue & Act for future」を、企画者と主催者へのインタビューを通して掘り下げるスペシャルレポートを前後編2回に渡って掲載します。取材は、昨年も同イベントに参加し、制作手帖に体験レポートを寄稿したNext舞台制作塾コーディネーターの藤原顕太。


2013年11月2日。静岡県静岡市、東静岡駅前にある「静岡芸術劇場」では、この日に上演される主催演目『サーカス物語』開演の準備が進められている中、劇場内2階に併設されているカフェ「シンデレラ」は開場前にも関わらず、多くの人で賑わっていた。
この日から2泊3日の日程で実施される「静岡から社会と芸術を考える合宿ワークショップ まちと劇場と祝祭と Dialogue & Act for future」の開催に合わせ、全国各地から集まった参加者たちである。

本レポートは、このワークショップ(以下WSと表記)の企画者である、名古屋の「劇団うりんこ」制作の平松隆之氏、同じく名古屋でKeramago Works(ケラマーゴ・ワークス)の屋号でWSのファシリテーターを務める白川陽一氏、そしてこのWSを主催する公益財団法人静岡県舞台芸術センター(SPAC)で企画を担当した平田大氏に、実際にこのWSを体験した記者が後日インタビューをした内容で構成されている。


持ち込みから始まった企画

このWSは前年2012年にスタートした企画で、今回は2回目の開催であった。まずは前年のWSの企画がどのように立ち上がったかについて、平松氏と白川氏に話を聞いてみた。

平松:
きっかけは、自分達の劇団が公的助成を得て活動したり、公共ホールで公演をするときに、「なぜ公的支援が必要なのか?」という問いに対して、自分自身で納得のいく説明ができないということでした。公演自体は好きな人が見に行くものだけれども、社会にとっても必要だという感覚があってやっている仕事です。
私が仕事をしている劇団うりんこの場合、昔から学校公演を通じて、社会教育を実践してきた団体です。だからこそ、途中から入団した私は、社会にとっての芸術の役割について、自分自身で定義する必要があると感じていました。
そこで白川さんや、加藤舞美さん(名古屋市市民活動推進センター/※前年の同イベントでファシリテーターを務めた)など、この問題に興味がある人と共に、医療や道路といった他の公共サービスと芸術を比較して考える会を、名古屋と福岡で開いたことがありました。「公共」とか「公共性」という言葉は広い範囲を指しますが、このときには「税金を使う整合性」という観点から知ろうとしたのです。しかし、やはりこれは数時間程度で掘り下げられる内容ではありませんでした。そのため、合宿のようにまとまった時間が取れる形で再度できないかと考えていました。同時に白川さんからは「芸術を取り扱うWSをするのなら、実際に作品を観ることと組み合わせたら?」という提案がありました。
それならば、普段から芝居を観る人も、そうでない人もお互いに感想を交換できるような作品を作っている団体と協働できないかと考え、思いついたのがSPACの公演でした。
最初は自分達だけの非公式な企画としてやろうとしていたのですが、SPACにこの企画のことを話したところ、思った以上に親身に相談に乗ってくださり、何と最終的にはSPACの主催事業としてWSをやらせてもらえることになりました(笑)。

白川:
平松さんからこのWSを一緒に企画しないか、という誘いをもらった時、僕の専門分野である体験学習の手法が使えるのではないかと思いました。体験学習とは、共通体験をみんなですることで、その体験が自分に引き起こしたことを指摘し合い、分析する。さらに仮説を立てて、それを再検証していくというような方法論です。
何よりも大事なのは、動機です。僕にとってWSは、その人自身の自己探求を促すものでありたいと考えています。平松さんの場合、関心のポイントは「テーマ」にありましたが、僕は人が集まって何かを考えることや、そこから生み出されるものの価値といった、いわば「作法」に強く関心があります。

平松:
僕がお芝居や芸術について7対3くらいで関心の比重があるのに対して、白川さんは逆に、関わり方やプログラムデザインの方に7対3の比重があるという、バランスのとれた組み合わせでしたね。
自分自身のしている様々な活動のことを人から聞かれたとき、このWSなどで場を踏んできたことによって、以前より明確に、その回答を説明できるようになっていると自分でも思います。
この活動は物理的に腹の足しになるような種類のものではない。でも、今の日本で年間に三万人も自殺しているっていうということが僕にとっては大きな問題で、許しがたいこと。その問題にアクセスして、何とかしていきたいと思っています。色んな人を巻き込んでいきながら活動をしているのは、趣味でやっているからではなく、社会的な問題を解決するための僕なりのアプローチだからです。

白川:
本当に内容に興味があり、時間がとれる人に来て欲しかったので、募集に際して、少しだけ参加ハードルが上がるような文言を出しました。そのお蔭で、考える覚悟をしている人たちが集まって、質の高い時間が流れるWSになったと思います。

このようにして開催された第一回のWSは、23人(3日間通しの参加者)のメンバーが静岡県をはじめとして全国各地から参加し、盛況のうちに終わった。
前年度のレポートはこちらをご覧下さい
そして1年後。前年のWSに手応えを感じていたSPAC側から、WSを再び開催したい、という依頼が平松氏・白川氏のもとに届いた。
今回SPAC側の担当者であった平田氏は、このWSに企画者として携わるのは初めてだった。昨年の記録を参考にしながらも、当日は平田氏自身もWSに積極的に参加することで、劇場の人間としても、この企画の良さは何なのかを、実体験を通じて考察していったという。

平田:
知識を集約することは、劇場が本来持っている役割です。このWSは、劇場としてソフトを充実させるための企画の一つとして、実施しました。SPACではこれまで、俳優向けのワークショップや、戯曲を読むリーディング・カフェは実施してきましたが、こういった対話型のWSは、前回が初の試みでした。

平松:
去年このWSを実施して良かった理由の一つとして、演目とWSが連携することで、互いの企画の集客にも効果があったこともあげられます。
今回は「大道芸ワールドカップin静岡」(※毎年11月初旬に静岡市で開催され、毎年150万人もの人を集めるアジア最大級のパフォーミングアート・フェスティバル)と日程が重ねられそうでした。同じアートのコンテンツでも、路上などの場所でやるときは、観客の作品への関わり方が違う。劇場で見るときは自分と向き合う感じがかなり強くなるし、路上のようなオープンな場所だと、一緒に行った友達やその場にいる人と盛り上がったり、目線が横に広がる感じがします。大道芸フェス(路上)と劇場を比較すると、場所と作品の関係性が見えるのではないかと思いました。
それと僕には「観客っていうのは本当に受動的な人なんだろうか?」という問いがありました。見る/見られる、する/される、お金を払う消費者/払われる生産者…といった関係だけで考えることへの疑問です。公演前後にレクチャーがあったり、原作を読んでみたり、終わった後にTwitterでつぶやいたりとか、作り手と観客の関係性が変わる要素って、実は色々あると思います。

白川:
例えば自分の観た演劇が良かったときに、「あの良さは見ないと分からない」と言い切って終わりにしてしまうのは、すごく勿体ないことをしていると思います。相手に演劇を薦めたいと思っている人ならば、この演劇のどこがいいかということを、言葉を尽くして説明するべきではないでしょうか。ワークショップも同様です。
主観的体験は当然人によって受け取る感覚が違いますし、自分と相手で言葉の意味を共有するのは本質的に難しいのですが、理解できるように説明する努力は尽くしたほうが良いと思っています。

ファシリテーターにとって大切なこととは?

普段ファシリテーターとして活動するときに気をつけていることを、二人に聞いてみた。

白川:
大事にしているのは大きく二つです。一つは、自分にとって都合のいい可能性ばかりを求めず、フラットに考えること。もう一つは、自分の体内で起こること、例えば感情や皮膚感覚を大事にするということです。
あとは他の人の話を聞いたときに、お互いの問題意識を媒介にしながら着想を豊かにするということもあるのですが、それについては経験の幅広さという、基礎の積み重ねによるところが大きいのでケースバイケースとなりますね。

平松:
僕はとにかく、このことについて真摯なんだっていう態度ですね。そのこと自体がまさに演劇的で、皮膚感覚でその場にいる人に伝わる。だからファシリテーターをしている間は、何もやっていなくても緊張します。去年とかは夜中の三時まで翌日にやる予定の中身をもう一回検証して、結果的にはほとんど変わらない中身になって、「だったら最初から同じ内容でやればよかったじゃん」みたいな(笑)でもこうやって「いたらないこともあるけど、やるだけのことはやった」ということがやはり場に伝わると思う。

白川:
僕はWSでも日常生活でも、自分の感覚を信じることにしています。内観する、ということですね。もやもやするとか、何かおかしいなという感覚が体の中にあったら、そこを信用するんですよ。例えば今回のプログラムのうち、ペアインタビューに関しては実施を一度はお蔵入りしていたのですが、僕にはたぶん今回の内容と合う、という直感があったので、なぜ自分がそう思ったかという言葉を後から補足していきました。

平松:
WSは毎回違う人が参加するので、用意したプログラムがその全員に合っているかどうかは、始まってみないと分からない。だから、WSの途中で違和感に気付いたとき、その場で早く修正できることが、ファシリテーターの才能だと思います。
もし劇団のように、毎日顔を合わせていて明日も会うメンバーに対してなら、ひとまず今日のところは違和感があるということだけを言う、ということができる。でもWSの場合、そのときだけ会う人の内面に、そのときだけ起きていることがある。違和感に気付けないっていうのが、一番ひどいですね。
ファシリテーターは監督と一緒です。ルールを決め、最初にやることを説明だけしたら、進行中は基本的に何にもしない。WS中にファシリテーターにできることといえば、時間の取り方や言葉の投げかけ方を変えるくらいです。ファシリテーターがテーブルを回っていきながらポロッと何かを言うのは、監督でいえば、サインを送る程度のことですね。こうしてデザインが決まれば、あとはプレイヤーの能力だけで場が成り立つ。
ファシリテーターは勉強しないとできないとか、特別なことを知っていないとできないと思われているかもしれないけれど、実はそんなことはありません。みんな生きてきた中で蓄積してきた経験が色々とあるのだから、その自分の中にある泉みたいなものを信じ、頼りながらプログラムを作っていけばいい。これが、僕がファシリテーターについて勉強したときに最も学んだことでした。

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