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「制作のスパイス」第1回:松村卓人さん(コンサルティング会社勤務)

14.07/20

直接会うことがなかなかできない異なる分野や職能のお仕事をされている方のお話は、自らに豊富な視野と客観的な視点をもたらしてくれると思っています。
制作者にとって直接、気づきやキャリアのヒントになるような話でなくても、料理の味付けがスパイスによって変わるように仕事の味付けが変わるような何かがあるかもしれません。そんな要素を、Next企画営業部の川口聡の視点で探ってみました。

第1回:松村卓人さん
(コンサルティング会社勤務
/株式会社セルム 取締役関西支社支社長)
株式会社セルム http://www.celm.co.jp/

全4回「制作のスパイス」の第1回目に選んだのは、コンサルティングの世界。
クライアントである企業の課題に対して、いかに向き合い解決方法を提示していくか、というコンサルティングの仕事の中に、舞台制作者のアーティストとの向き合い方、観客との関係性のつくり方、自身が活動を継続していくマインドなど・・・
参考にできる要素があるかもしれません。

人材育成は、難しいと同時にとてもシンプルで「どれだけ目的に忠実になれるか」なんです。

株式会社セルムについて聞かせて下さい。
私たちの会社は、創業から19年目(2014年現在)になる、クライアント企業の経営戦略と理念に同期する人材開発コンサルティングを行なっている会社です。

どういった業態、業界と捉えればいいですか?
コンサルティングという業態に入りますし、教育業界というくくりにも入ります。

どういったサービスを提供しているのですか?
提供しているサービスは、コンサルティングサービスと、研修プログラムサービスのふたつです。クライアントである企業の課題に対して、解決のアプローチが、コンサルティングになる場合と、研修の提案になる場合があります。コンサルティングの場合は、その企業の制度などを変えていくような場合もあります。

課題解決は株式会社セルムのスタッフが単独で企画立案しているのですか?
いえ、社外に930名のパートナーコンサルタントがいます。私たちはクライアント企業において人と組織がどう動くのが最適なのかという目線で見て、課題を見つけたらそれを実現してくれる930名のパートナーコンサルタントの誰と組めば解決が図れるかを考えていきます。

会社の成り立ちについて伺います。創業者が今も社長ですか?
ホールディング制になっていて、創業者は今は、ホールディングの社長(会長)です。

会長が個人で始めたのですか?
創業は二人でした。実は、二人は営業とお客さんの関係でした。
二人は当初、何をやるかを決めていなかったんです。

創業当時のことをもうすこし詳しく聞かせて下さい。
はい。二人の人脈を活かして当初は来るもの拒まずでコンサルティングを始めました。しばらくして、大きなホテルのコンサルティングの案件を受注したのですが、案件が大きすぎて自分たちの手に負えない事態となりました。どうするか悩み、元マッキンゼー(マッキンゼー・アンド・カンパニー/世界でトップ3に入るコンサルティングファームの会社)のコンサルタントに依頼すると1週間たたない内に分厚く内容の濃い報告書がパッと出てきた。世の中にはこんなに凄い人がいるのかと二人は驚きました。自分たちだけで解決できなくても、世の中にいる凄い人を企業の課題解決のパートナーとしていく。自分たちは課題ごとに誰がベストかを考える、人的資源のトータルオーガナイザーになったらいいのではないかという発想に至りました。その人的資源が社外にいる930名のパートナーコンサルタントです。

創業時と変わってきている点はありますか?
コンサルティングというのは、クライアントになる企業側に課題があってはじめて発生するんですが、課題を解決すると、コンサルティング会社にとっては翌年は仕事がない(笑)。でも本当の課題解決のためには実践が必要なんです。実践を行なっていく上では、スキルの強化やマインドセットが不可欠になるので、研修を一緒に行なっていくことになりました。次に大きな企業じゃないと対象者がいなくなる。課長が全部で100人ぐらいの企業だと、2年ぐらいで研修が終わってしまいます。なので、10年ほど前にコンサルティングの対象企業を一部上場の大手企業・・年商5000億以上、従業員5000人以上・・に絞りました。さらに、5年前の社長交替を機に人材開発のコンサルティングを行うことに事業を特化しました。
でも変わっていないのはクライアント起点ということ。クライアントが抱えている課題は何なのか?ということが私たちのコンサルティングのスタートとなります。そして、その課題解決に最適な人材を外部から探してマッチングを行います。なので今でも、私たちが提供する価値(バリュー)は、「何をやるかではなく誰とやるか」なんです。

コンサルティングの形態は、一般的にはどういったものがあるのですか?
コンサルティングは医療に例えると3種類ぐらいあって。ひとつ目は専門医モデル。クライアントがうちはここが悪いんだとわかってて、その専門医を呼ぶ。IT系などがイメージしやすいかもしれません。ITの設備を導入したいとなるとITコンサルタントを呼ぶしかないですよね。完全に課題がわかってる場合、専門家を呼んで解決します。
2つ目は、医者-患者モデル。患者はお腹が痛いと言う。お医者さん的なコンサルタントが、この腹痛はこういう原因ですよと処方箋を出すモデルですね。
ただし、これはそのあと薬を飲み続けるかどうかはあなた次第ですよ、というモデルになります。
私たちが目指しているのは3つ目なのですが、これはお腹が痛いということを一緒に考えていくというモデルです。コンサルティングが医者として問診をし、クライアントである患者が納得する課題を見つけ、それを解決していくにはどうすればいいかを一緒に考えていくモデルです。なぜ一緒に考えていくかというと、課題解決の方法を実践するだけでなく、実践によって“成果を挙げる”ことがゴールとなるからです。医療で言うと治癒するところまで向き合うということですね。そのためには当事者であるクライアントの企業には課題を解決することに向きあう主体性が数年に渡って必要になります。業界では、この形態をプロセス・コンサルティングと呼びます。

課題解決に誰が最適か・・いわゆるコーディネートする力や相手の課題を見つけ出すスキルが、松村さんの会社のスタッフに求められますね。そのために松村さんの会社の人材育成は、より重要ですね。
そうです。現段階では、まだスタッフそのものの資質やスキル次第なところがあります。それは私たちの課題なのですが。でも人材育成は、難しいと同時にとてもシンプルで「どれだけ目的に忠実になれるか」なんです。つまり「何のためにやるんだ」ということなんですね。「何のためにやるのか」という目的が決まって、はじめてHOW(どのようにやるのか)が考えられるようになり、全体像と優先順位が決まっていきます。

コーディネートする力は仕事の中で鍛えられるものですか?それとも会社の中で独自のトレーニング方法があるのですか?
独自のトレーニング方法はありません。クライアントと接する中で鍛えられます。例えば、クライアントから次期社長をつくりたいという依頼が来たら「何のために次期社長をつくるのか?」ということを考えていかなければなりません。私たちは、クライアントの要望をそのまま受けるのではなく、次期社長をつくることは大事だけど、なぜ、そのクライアント企業が人材育成を必要としているのか?ということから考えるんです。もしかしたら課題は社長じゃないかもしれない、ひょっとしたら部長が先かもしれない・・・そういうことを考えます。
コンサルティングのスタンスとしては、クライアントと同じ目線で現実を見て共に未来を見ます。そうすると現実と未来のギャップがわかるので、そのギャップを解消するためにクライアントの企業において、人と組織がどう動くことが最適なのかを考えていきます。
方法が決まるとクライアントと私たちと930名のコンサルティングパートナーが一緒に解決していきます。そのプロセスが私たちを鍛えることになります。私たちの社の中には「できるできないではなく、やるかやらないか」という言葉があって、私たちはクライアントに言われたことをできませんとは絶対に言いません。だって世の中にはこんなにたくさんの知恵があるのだから、自分さえやる気になればどんなプロデュースもできるはずなんです。

コンサルティングの仕事を行う上で、必要な意識を3つ挙げるなら「こだわりがあること」「諦めないこと」「素直であること」でしょうか。

現在の松村さんの会社と、ご自身の考え方について聞かせて下さい。社員には売上の目標はあるのですか?
一応あります。でも月にいくら売り上げたかということが大事なことではないので評価は1年を通してになります。つまり、いかにクライアントとパートナーシップを構築できたかが評価になります。もちろん数字はその結果として大事になるんですが、より大事なのは“プロセス”としてクライアントとどういう関わり方をしていったかなんです。それはクライアントと唯一無二のパートナーになるというのが目指す姿だからです。

松村さんは後進や部下にはどういうことを伝えていますか?
私がコンサルティングという仕事を行う上で重要だと思う点は「結局、クライアントとどう付き合っていきたいのか?」という点なんです。その解答が自分の側にないとパートナー(クライアント)の進化というのは絶対に生まれない。それは部下には絶対に掲げてもらうんです。「3年後どうなっていたいの?」「クライアントからどう見られたいの?」「どんな仕事を一緒にしたいの?」と。パートナーシップモデルと私たちが呼んでるこのコンサルティングのモデルは自分の成長と結構、正比例なんです。自分が成長しないとクライアントとのパートナーシップは絶対に深まらない。
そのために“信頼”というのが大前提として必要です。でも信頼というのはシンプルで「嘘をつかない」とか「問いに忠実に答える」ということをしているとその残高はどんどん上がっていく。まわりを見ていると、問われたことに対して答えることができていないということがすごく多いと思います。クライアントの真意がつかめていないというか。本当にやって欲しいことをいつもクライアントが言葉にしてくれるわけでもないですし。

クライアントとパートナーシップを築く上で大事だと思うことは何ですか?
コンサルティングの仕事はクライアント企業にとっての10歩先を見ないといけないんです。こうなっていきたいという姿ですね。そして“10歩先を見ながら半歩を一緒に踏み出せるか”ということが大事になります。10歩先には、従業員が5000人以上もいる大企業はいきなり行けないんです。「あなたの企業はこうするべきですよ」ということを言うのは簡単なんですが、先の患者と医者の関係でいうと「こうすれば絶対に治りますよ」ということは誰でも言えるんだけれども、その人に自分で治せる体力がなければ、まったく意味がありませんよね。企業の話に戻すと、その企業に企業としての体力や市場での競争力がなければ、10歩先にはいきなり行けない。10歩先を見るのは大事だけど、半歩先にクライアントと一緒に踏みこんでいけるかが大事になります。

頑固なクライアントもいるのではないですか?
それはいますね(笑)。例えば、ある時「どうしてもマーケティング研修がしたいんだ」と強く言ってきたクライアントの担当者がいました。強固に言われれば、そこで掘っても仕様がないときはあるので、わかりましたと答えます。けれども、そこで受けて提案をしながらも、この人は何でそもそもそれをやりたいのか?その人は誰に言われて、どういうスタンスで仕事をしているのか?を考えるんです。実は今の配属先に不満を持っているのかもしれないな、とか。そういう場合、その人の人生をちゃんと見てあげて、この人が何を守っているのかについて真剣に考えるんです。

そのクライアントの担当者が、どうにも変わらないなと思ったときはどうするのですか?
私の場合は、そのときはあきらめます。でも部下であきらめないピュアな人間もいて、そういう人間が思いをぶつけることで変わるクライアントの担当者もいますし、トラブルになることも当然あります・・粛々と言われたことをそこではやるのか、もっと上層の人に会うのか・・その判断は必要ですね。誰にどのような価値をどう提供するかっていうことの組み合わせを外すと、コンサルティングは掛け算なので成果はゼロになってしまいます。どんなに良い価値を持っていても、提案する相手(クライアントの担当者)を間違えたら、それは価値はないに等しいですし。良いクライント担当者と一緒に進めることが出来ていて、価値も提供できているし、相手もすごく共感しているけど、ソリューション(成果を出す解決策)が駄目だったら、これまたゼロになります。
従って、“解決するべき課題がその会社の経営戦略に同期しているか”がとても重要になるんです。クライアント側の担当者が思いつきでやりたいと言ってきたことにそんなに工数をかけても仕方がなくて。それはもうそこで粛々とやればすむ話で。でも経営戦略に同期した課題で、かつその課題が大きければ絶対に担当者個人では抱えきれないので、その企業の担当者以外の人を動かせるんです。人事部だけでは抱えきれない課題であれば、経営戦略室を巻き込まないといけない場合もあるし、事業部に話しを通しに行かなければならない場合もあるし・・実は、大企業の場合、組織の壁がそこにあったりします。そこを私たちがクライアント企業の部署や部門を越えて、話をしに行って合意をとってくることで解決する場合もあります。どこがボトルネック(スムーズな進行を阻害する隘路)になっているかでアプローチを変えていきますね。

そういう柔軟なアプローチはどうすればできるようになるのでしょうか?
アプローチを変えていけるかどうかは、私たちコンサルティングを行う個人の成長しかないと思っています。なのでクライアント企業とのパートナーシップというのは自己成長と正比例します。自己成長はお客さんが鏡になるんです。

コンサルティングの仕事を行う上で、必要な能力、または意識を3つ挙げるなら何になりますか?
そうですね。「こだわりがあること」「諦めないこと」「素直であること」でしょうか。「こだわりがあること」と「素直であること」は一見、相反していますが、その相反しているもの・・矛盾を自分の中で持っていることが大事だと思います。「諦めない」ということは、スタンスや意識だけではなくて、考えることと行動することをあきらめないということですね。私たちはクライアントのことをずっと諦めずに考えているので、考える事が好きでない人はこの仕事はむいていないかもしれません。言い換えると「こだわり」を持てるってことは、自分の解答を持てるっていうことなんです。自分であればこうだと思うという解答ですね。
私は最近「答えのない~」っていう表現が嫌いなんです。答えというのは自分がつくるものだと思っているんです。“自分の解”というものは持てるって思っています。それは間違っていてもいいんですよ。「そこはわかるけれども・・でも私はこう思います。なぜならば・・・」っていう答えをちゃんと出せるかだと思います。

松村さん個人が今後やっていきたいと思っていることは何ですか?
私は、人の成長意欲を喚起することをやりたいと思っています。そのために人が持っている“好奇心を解放したい”と思っています。その結果、人の情熱が花咲くようなことがあるといいなと思っています。そのための模索や自分の中での実験を現在も行なっています。10年間この仕事をやってきて、それが好きなんだなと思いました。

好奇心を解放することは、私はエンターテインメントだと思っています。

最後に、松村さんは大学時代、演劇研究部に所属しておられたそうですね。演劇を創っていた経験が、今の仕事と繋がっている点はありますか?また松村さんにとって演劇はどういったものですか?
人材開発をすること・・・つまり、さきほど話した“好奇心を解放する”ことっていうのは、私はエンターテインメントだと思っています。エンターテインメントというのは喜怒哀楽・・・感情の起伏があることがそうだと思っているんですが、人が成長する上でのエンターテインメントというのはもっと掘り下げたいなと思っています。非日常がもたらす日常への効果というのは、何なのだろうな、ということに今すごく興味があるんです。
もちろん演劇は観賞して楽しむものという考えもあると思いますが、演劇にはメソッドがあるはずなのでそのメソッドを自分の人生を豊かにするために、どう使うのかということで結びつけて考えています。大学時代はそういう観点で取り組んでいなかったので、その点はもっと探求すればよかったなと思っているんですけどね。
コミュニケーションの方法であったり、感情の表現だったり、もっと学んでいれば今の仕事に活かせただろうなと思います。私は演劇のポテンシャルは教育に近いと思っているんですよ。ただ、コミュニケーションの方法や感情の表現から気づきや発見を得ても、それだけではダメで、意識だけではなかなか人は変われない。気づきだけで変わることができるならどんな人もとっくに変わっているはずなんです。気づきや発見を日常に落とし込むにはトレーニングが必要だと思うので、そのトレーニング方法の提案が自分の仕事のチャンスだと思っています。

取材後記/川口聡

松村さんのお話を伺っていて印象的だったのは、質問に対して実に的確な答えが返ってきたこと、どういった問いに対しても、ほぼ間髪入れずにその時点で答えうる解答を瞬時に導き出している点でした。それはインタビューの中で出てきた「問いに忠実に答える」ということを、日々の中で実践し、そのたゆまぬ繰り返しが、クライアントとなる企業に対して営業・相談・立案・提案・進行・運営を行い、パートナーとして協働するコンサルタントを動かし、さらには自社のマネージメントでも成果を挙げている要素ではないかと思いました。
また自己成長がパートナーシップを築く上で正比例になるという実感にもとても共感します。アーティストと制作者が共に自己成長を遂げていくときにパートナーシップは築かれるのではないでしょうか。最後に舞台芸術を何のために行うのかという目的、その目的のために舞台芸術が最適であるという自分だけの解、その解の提案を観客に対して行なっているという視点で制作の仕事を捉えてみたときに、制作の意義は自然と明確になってくるのかもしれません。


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