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新長田で考える、ダンスをめぐる現場から(身体ごと投げだすかのように)/横堀ふみ vol.5

13.10/10

神戸の新長田に拠点(小劇場ArtTheater dB神戸とstudio dB KOBE)を構え、おもにコンテンポラリーダンスのプログラムを企画制作する「NPO法人DANCE BOX」の
横堀ふみさんの連載コラム!前号でご紹介した「新長田のダンス事情(仮称)」5年目のイベントは、ぶじに終了いたしました。この2日間について、そしてこの5年間について、どのような言葉が生成できるのか、正直まだ途方に暮れています。いわゆる成果らしいと思えることを言葉にす

新長田のダンス事情(仮称)」5年目のイベント の記録写真より

前号でご紹介した「新長田のダンス事情(仮称)」5年目のイベントは、ぶじに終了いたしました。この2日間について、そしてこの5年間について、どのような言葉が生成できるのか、正直まだ途方に暮れています。いわゆる成果らしいと思えることを言葉にすることは出来るかもしれない。新長田で踊る人がどれ程集まったのか、これまで踊る人々のグループ間で相互にダンスを見合うことや出会う場があるようであまりなかったとか、新長田で踊る人と劇場等で創作活動を行って来た人との新たな交流について、そしてこの交流がまだ続く可能性を大きく孕んでいることとか。ただ、果たしてそれらの言葉がこの5年間をこの2日間を語り得る言葉であるのか、本当の(!?)成果って一体なんだろう、いつどのように立ち現れてくるものだろうか、誰にとっての成果なのか?ということも含めて、後味を残したような心持ちがずっと続いています。私たちにとって良かったと思えることも、新長田で踊る人々にとってはどうだったのか、この2日間立ち会って下さった方にとってはどう感じられたのか、新長田で踊る人々との出会いに火を起こしたアーティストにとってはどうだったのか、もう少し時間を置いて、じっくりと聞いてみたい。その一方で聞くことや話すこと以外に検証する方法はないのだろうかと考えています。こうモヤモヤとしている時に、羽鳥嘉郎さん、武藤大祐さんが「Kyoto Experiment フリンジ・プログラム:使えるプログラム」にて、「新長田のダンス事情」について話す会を設けて下さいました。10月27日(日)に開催予定です。「新長田のダンス事情(仮称)」を実施する中で立ち上がってきた沢山の問いかけを持参して挑みたいと思います。

子ども映画 ワークショップ および 実際の撮影現場の写真

現在は、今秋のプロジェクトに向けて、再び猛ダッシュで準備を進めています。今秋のプロジェクトは、新長田で踊る人だけはなく、新長田にお住まいの人々と一緒にあらたな文化祭のようなフェスティバルを立ち上げようと思い、「みんなのフェスティバル」というお題目で立ち上げました。小学生の子ども達が新長田を舞台にして映画を制作すること、中学生によるダンスを立ち上げること(企画の立ち上げ当初には“ガラスの10代のパフォーマンス”と呼んでいました)、女性はより美しく!きれいに歩く講座を通してファッションショーを行うこと、男性の知的好奇心をくすぐりつつ呑みやメタボ対策エクササイズを通して横のつながりを作れるような場づくりや、おじいさん・おばあさんによる子守唄を採集し、それらの唄に浸ることのできるような時間、dBのフリーペーパー「長田ルンバ」の1コーナー「大谷燠のイクイク酔行記」(ほろ酔い対談)の公開版、交流会+ダンス・パーティーも中締めとして組み込みつつ、最後に西日本の各地域で活動する振付家やダンサーが一堂に会したプログラムを実施します。私たちが新長田で活動する中で見えてきた多層なレイヤーをゆるやかに混ぜることのできる場所、そして私たちが新長田に拠点を移した時に活動の現場を思考する際に「関西」から「西日本」という射程に一気に広がったことで徐々に見えてきた多層なレイヤーをゆるやかに混ぜること。この二つを同時に走らせながら、さらにこの二つの場所が交差するような現場が作れないだろうかと考えています。ここではダンスに特化するのではなく、映画や唄、ファッション、音楽などより明快で複数の入り口があることに挑戦することも重きをおいた点です。「新長田のダンス事情(仮称)」を通して、ダンスと繋ぐことのできる様々な要素、例えば、唄や音楽、お酒、ご飯、コミュニティ、場所の特性などが絡み合って、ダンスの豊かさを形成し、ダンスを成立させているような現場に重ねて立ち会ってきました。これらは起点がダンスであったことから見えてきたことでした。では、起点を別のことに設定した時に、どのような手法がそれらを繋ぐのに相応しいのだろうかと考えたのが「みんなのフェスティバル」です。今回はざっくりとはしていますが「世代」ということを起点に考えました。「ダンス」を起点にしていると決して出会うことはなかっただろうと思える方と、活動を共にし始めています。さぁ、私たちのこれらの活動はどこへ行くのでしょうか。身体ごと投げだすかのように、新長田での活動を進めてきましたが、5年目にして新たな(?)展開へとコマを進めるための時機がきているような予感がしています。

次号は「みんなのフェスティバル」の現在進行形のプロセスについて、ご紹介したいと思います。



写真:倉科直弘

■横堀 ふみ(よこぼり・ふみ)■
NPO法人 DANCE BOX プログラム・ディレクター/制作
平成18年度文化庁新進芸術家国内研修制度研修員。平成20年度ACC(Asia Cultural Council)のグラントを得て、約6ヶ月間にわたり、アジア6カ国とNYにおいて舞台芸術の実態調査を実施。おもにアジア間におけるネットワークの構築を目指し、レジデンス・スペースや劇場、フェスティバルのディレクターらとの交流促進を行っている。


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