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制作者4人が振り返る。ままごと『わたしの星』

14.10/21

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小さい社会みたいなのができるんですよね(宮永)

-宮永さんも、「大人と仕事をするときとの感覚の違い」は感じましたか?

 
宮永:僕は特に感じなかったかな(笑)。高校生たちとの対峙の仕方に関しては、最初から「僕は君たちをプロとして扱う」っていうスタンスを変えなかったですし、それを伝えるようにしていたから。結局のところは、バランスだと思うんです。僕みたいなのがいて、仲ちゃん(加藤さん)みたいに細かく見てくれる人がいて、森元さん、森川さんもいて、いろんなキャラクターがいて、小さい社会みたいなのができるんですよね。じゃあその時、その中で、彼らはどう振る舞うのか、その中で何がOKで、何がNGなのか、それを僕らも探りながらやっていた、ということだと思います。

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森元:もちろん劇場入りしてからは毎日ホールにいましたけど、我々三鷹の二名は、あまり稽古場には行けなかったので、劇場入りするまでは、宮永さんは、いざというときのためのお父さんで、僕ら二人は時々来る親戚みたいな感じだったかもしれません(笑)。

加藤:私にとっては、宮永さんが後ろに立っててくれるから、何しても多分大丈夫っていうのはありました。それこそ本当に、「これやってもいいか、お父さん(宮永さん)に聞きにいこうか。そのためにどう話する?」とかって、高校生スタッフとやり取りしたりしていました。

宮永:例えば、物販コーナーで「宇宙食を売りたい」ってアイディアが出てきたことがあったんですね。高校生スタッフには積極的に作品に関わって欲しいと考えていたので、アイディアが出る事自体は大歓迎なのですが、それが『わたしの星』という作品がより豊かになるためのアクションなのかどうか・・・。そのことをちゃんと考えた?という問いに、アイディアを出した本人が答えられるかが大事だと思っていて、そのことを伝えたら、そのアイディアはうまく形にならなかったんですよね。

森元:ままごと本公演としての、一定のセンスというのは絶対にありますから、その判断は宮永さんと加藤さんにお任せしていました。僕の中で印象的だったのは、高校生スタッフの一人が、ある日の前説・後説を担当することになったのですが、練習しても上手くいかず、「できない!」って諦めてしまったんです。残念だなと思っていたら、その二日後くらいに、その子がびしっと前説を務めていたんです。自分の力で成長していくんだなと感じて、とても頼もしかった。高校生スタッフが、目を輝かして色んな仕事をしているのを見るのは、とても嬉しかったですし、こちらが学ぶことも本当に多かったです。

プロの俳優になってました。途中から急に(宮永)

-ままごとにとって、これまでの様々なプロジェクトの成果が現れた、という想いはありますか?

宮永琢生さん

宮永:この1、2年、作品をつくるときの変化というのが、集団の中であったんですね。いままではシステマティックな作り方をしてた部分もあったのですが、今回の柴(幸男)の作風にもあらわれているように、外的要素を受け入れる、それを味方につける作品づくりに変わってきた。ある種の余裕というか、余白の部分も味方につけた方が、作品が豊かになるんじゃないかという方向に、集団としての意識が向いてきているように思います。その外的要素の最たるものかもしれませんね、高校生というのは。

森元:柴さんの演出が相当変わったなと感じました。とにかく客席全体に届けるんだと。それは小豆島の経験(ままごとが、香川県の小豆島で展開しているプロジェクト)などで、「ちゃんと届けることができなければ自己満足に終わってしまう」という意識が生まれたのだろうなと思いました。

宮永:本質的なところでの、役者を信じるようになった、ということだと思うんです。役者のポテンシャルをどこまで引き出せるか、という演出に変わってきたって感じですよね。

森元:今回は特に高校生ですし、柴さんは最後の最後までなるべく演技を固めずに、まずは「どんなことにでも対応できる空気感を作ってしまえば、舞台上で何がおこっても、空気さえ繋いでいけば芝居は成立するんだ」という根っこの部分を、稽古場で作ろうとされていたのだと思います。だから台本を渡しても「この通り言わないで。自分たちで考えて、違うセリフでもっと面白くして」というオーダーをされていた。かなり高度な要求で、もちろん高校生の方には戸惑いもあったのかもしれません。どうしても「何をしたら正解なんだろう」という、分かり易い回答を求めがちなのだけど、最後までそれを提示せず、舞台上で何があっても繋いでいけるように、辛抱強く稽古を進めているなあと思いながら見ていました。

-本番中にトラブルはありましたか?

宮永:よっぽど大きなのはなかったですね。それと、スタッフの中でよく言ってたんですけど、プロの俳優になってましたからね、途中から急に。

加藤:お客さんの反応が必要以上に気になったり、そこに左右されたりということが最初の方はありましたけど、途中からは落ち着いた反応を示すようになっていきました。先程、昼夜公演の間に寝てたって話がありましたけど、それまでは、休憩!ってなってもキャッキャしてたり、動き回ったりして休めているのか心配な状態だったのが、体力を温存するとか、次のステージに備えるという姿勢をとるようになっていったように思います。

宮永:そういえば初日の数日前に、仲ちゃん(加藤さん)が一度だけ怒ったことがあったんです。メーリングリストで「楽屋の使い方が酷い!汚い!」って送信して。本人は送った瞬間に「言い過ぎた」って後悔してましたけど、高校生たちの間に、ピリッとした緊張感が産まれた瞬間でもありました。

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