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Next舞台制作塾オープンセミナーvol.3 「舞台芸術にとって助成金とは何か?」~助成金の目的から申請書の書き方まで~ レポート

13.09/01

第二部『助成金申請書記入レクチャー』 (ヲザキ浩実さん)

「記入例」を参照しながらレクチャー ※一部抜粋

ヲザキさん:
まず「趣旨・目的」のところでチラシの宣伝文句をそのままコピペしている方が多かったりします。これは違うんです。お客様に足を運んでもらうための魅惑的な宣伝文と、我々が何をしたいのかを明確に示す文、というのは全く文章としての性格が違うので、そこは頑張って制作者は書き分けて下さい。次に、例えば「新進気鋭の」という修飾語などは、申請書で使うのに適していない表現だったりします。「斬新な」も同様で、基準がはっきりしない非常にきらびやかな表現は、こういった申請書では望ましくないということがあります。

むしろ「特記事項」の項目で、団体がこういう賞を受賞をしている、とか、主宰者が2011年からフェローシップの助成を受け続けているとか、活動や実績を示す客観的な情報は是非書き込んでください。
あと、カンパニーとして特記すべきこと、例えば劇場の招聘公演に呼ばれた、など、前回出してから今回までの間にあった実績なども積極的に書いて欲しいですね。

「実施時期・実施場所・実施回数」はしっかり書いて下さい。なかなか一年後とか一年以上後の計画を立てるのは難しいと思いますが、ここが詳細に書かれているか否かというのは、上演の実現性という観点で重要です。
ここがぼんやりしていると、公演計画が大幅に変わる可能性があるし、公演をやらない可能性・リスクが高まるので、どれだけこの段階で計画が綿密に練られて準備されているか示す必要があるんですね。なので、是非、頑張って申請時期までに公演計画をがっちり練っていただきたい。

また、よくあるのは出演者が「劇団員一同」と書いてあるもの。それはやはりキャスティングが成されていないのではないか、という疑いが発生してしまうし、出演者のギャラの算出について根拠が緩んでしまう。カンパニーには役者は少数しか所属してない筈なのに、予算の「出演料」の箇所で何十人も出す、と書いてある(笑)…とか。出演者の数は出来るかぎり詳細に記載して欲しいと思います。審査員はそういう矛盾も見逃がさないと思います。

なので、ここは演出家のお尻をたたいて、しっかり公演計画を立てて下さい。
あと、スタッフに関しても、決まっている所は書いていただきたいです。
特に実績のない若いカンパニーであっても、とても活躍されているスタッフが継続して関わっていると、将来性のある創作の姿勢や状況が垣間見えたりします。 実はそういう観点でも審査員は見ています。
「特記事項」に関してはさっき申し上げた通りです。特に「申請する公演」に関して以外のこと(実績や評価など)は、書き込む欄が、他にないことが多いので、なんとか書き込んでほしい。

「趣旨・目的」のところは、カンパニーにとっての長期的な展望や、どういう目的を持って活動し続けたいという意志表現。また演出家としっかり話して、今回の舞台はどういうことを表現し目的としているという、その公演のミッションをここに書き込んでもらえればいいと思います。

久野さん:
助成団体によってフォーカスしている部分が違うので、もし民間であれば、斬新なアイディア…それが、どれくらい新しいことで、どれくらいインパクトを与えるかというような記述みたいなものが無いと、作品のイメージが浮かばない。そういうことが重要かな。

たとえばセゾンの場合は、新しく申請した方とは必ず面談をするんですね。その人がここに書いてある新しいアイディアというものが、どういう風に新しいかという事を、その人の言葉で、口頭で説明して頂いています。
なので、募集要項をよく読んで、その財団がどこのどういうポイントを持った企画を欲しがっているのか、読み込んでいかないといけない。

あと、注意点は、民間の財団の助成申請するときに、文化庁や芸文のフォーマットで作成した予算書を添付してくる人がいるんですよ。
みなさんすごい力を込めて作っていらっしゃると思うんですけれど、あまりに力を入れ過ぎて万能だと思っちゃうのかな?
これはやめた方がいいですね。一気に熱が冷めてしまう。助成申請する団体ごとに、きちっと別の申請書を作っていかないと、失礼になります。

ヲザキさん:
同様に、公的助成であっても文化庁への申請書は万能ではないです。地方自治体からの助成で特定の地域への文化振興を目的にしていたり、子供が観賞するための活動に特化したものとか、いろんな目的の助成金があるので、それぞれにどう寄与するのか、この活動はどういう効果があるのかという点を、読み込んで、書き分け、ないしは活動・事業そのものの性格ををちょっとアレンジするということを制作者は行なった方がいいですね。
もう一つ言うと、助成対象経費が違っている場合があるので、同じ公共系でも、そこも要注意ですね。

モデレーター:
さっきのお話の中で、斬新なアイディアについて、どれくらい新しい事か、どれくらいインパクトを与えるか、という久野さんのお話がありましたが、逆にここを書けるということは、演劇の自分の観ている範囲を超えた演劇史そのものを知っておかなければならないという事ですか?

久野さん:
それは、そうですね。それは、新しい商品を開発するのとすごく似たところがあると思うのですが、類似品が無いかということを調べるという事ですね。
もし、類似品があったら、どこが違うのか、どう自分の方が優れているのか分析しておくのがいいのかな。

ヲザキさん:
制作者が知らなきゃいけない事っていっぱいあって、演劇史も知らないといけない。税金とか財務の事も知らないといけない。今度、今年から所得税の税率が変わりましたよね、そういうことも知らないとなりませんよね。あとスタッフさんの単価、これくらいかかる、とか。あとはこれくらいのセットを組むにはこれくらいかかるとか知ってないといけない。これについては舞台監督任せということもあるけれど、知ってないと予算書が書けないので、制作はスーパーマンでないといけない。
死ぬまで勉強なんですよね(笑)。

藤原(Next制作塾事務局):
今日のお話は、助成金申請のお話しであると同時に、PR(パブリックリレーション)のお話しでもありますね。例えばプレスリリースで、この雑誌社に届けるにはどういった言葉で伝えればいいのか、また逆に知り合いにならどう伝えればいいのかとか、そういうことにものすごく関連しているなと、聞きながら思いました。
要は、相手がどういうことを求めているのか、相手はミッションを持っているのか、そういった相手を知るという事と、自分が持っているものの中で、どういうことを相手に届ければそれは関連してくるのか、ということがすごく重要なのかな、と聞いていて思いました。

ヲザキさん:
だからセゾンさんの場合はアーティスト本人の言葉であったり、カンパニーであれば主宰者の言葉だったり、いろいろな角度から探ろうとしていますよね。
制作者は、アーティストの代弁をしないといけない。彼らが普段やっている事、表現しようとしていることを、他人に分かる言葉で翻訳しなおしてあげないといけないと思うんです。それがいわゆる、社会化の一歩かなと。
我々はアーティストそのものではないけれど、アーティスティックな面も持っていないといけない。アーティストの生みだすものの価値がわかる必要があります。
あくまで社会とアートを繋ぐお仕事だと思うので、制作者は。
なのでどっちの言葉もわからないといけないし、翻訳できないといけない。そういうところが、他の現場の人たち…役者やスタッフと一番違うところかな。
あとは、生臭いお金というものと、常に対峙しないといけない、と思います。


まとめ

このセミナーを通じて浮かびあがったのは、以下の点であったように思います。

■舞台芸術の優れた表現を生み出す団体やアーティストの活動が、“公共性”を持った活動ともなるという社会の認識の変化を背景にいかに「助成金制度」によって各団体が受けた助成、それによって生み出した作品の“成果”を舞台芸術界、さらには社会へと還元できるのか。
それを舞台芸術に携わる人間は考えなければならないのではないかという点。

■表現活動の意義や目的を言語化し、財務状況を明確にし開示していく役割において、「アーティスト」とは異なる、「制作者」の役割と存在意義があるのではないかという点。

■それぞれの助成金制度には、実施主体ごとに異なる目的があり、その目的に、それぞれの劇団や団体の事業としての公演活動が合致するかの見極めが重要なのではないかという点。

■助成金申請書を書くことは、公演計画、予算計画をしっかり立て、お金に関する解釈を整理することに他ならないという点。

最後に「助成金申請書記入レクチャー」では、助成金申請書に記載する上で、チラシなどに記載する“広報の言葉”としての形容を記載してしまう人がいるが、「活動の目的および内容」や公演の「趣旨・目的」は、観客に向けての集客のための言葉とは異なり、助成の目的に対して、どう意義のある活動なのかを“説明する言葉”を選択していかなければならないという解説がありました。

セミナー後の感想として参加者からは、今回のセミナーを通じて、制作者の存在の意義や役割、そのために必要なスキルを具体的にイメージできるようになった、との声もあり、登壇して頂いたお二方の実践的なアドバイスによって、参加者それぞれが自身の制作活動について考察する機会となりました。

(取材・文:川口)

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