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Next舞台制作塾オープンセミナーvol.3 「舞台芸術にとって助成金とは何か?」~助成金の目的から申請書の書き方まで~ レポート

13.09/01

会場からのQ&A

≪質問(1)≫
同じ助成団体に何度も応募することは採択に影響しますか?

ヲザキさん:
ないですよね、基本的には。

久野さん:
駆け出しの劇団であれば、数多くの財団に申請した方がいいと思います。ひとつは、絶対的にすぐにお金が取れる、という事ではなく、名前を売るということですね。
例えばうちの場合も、一回目のときはまだ見に行っていなかったりして、中身が分からない。でも、申請書を頂いたら、今年はちょっと内容知らないから助成できるかどうか判断できないけど、今年中に公演があったら見に行こうと思う訳です。
あと、審査員なんかにも、「この団体から申請書を頂いているんですけれども、アドバイザーの先生方、ご覧になりました?」って聞くわけです。
すると、審査員も、あ、見とかなきゃと思う訳です。
それからこれは最近の良くない傾向だと思うんですけれども、割とどこの財団も審査員が被っているという状況が起きていて、それで度々見たりして、審査員自身も「私、勉強不足かな?」と思って見に行かなきゃと思う訳です。私はおススメしますね、割と。

ヲザキさん:
申請書は量を書けば要領を覚えますからね、作戦を立てられる。しかも毎年どんどん変わってますから、特に文化庁系は私もついていけない(笑)。
それに、予算書って書くのめんどくさいじゃないですか、はっきり言って(笑)。煩雑さは慣れでしか解決しない部分があるので、量を書いた方がいいと思います。

モデレーター:
「この団体の申請書、また見た」という事をマイナスでとらえられる心配をするよりも、そこで申請書をブラッシュアップして毎年どんどん変えていけばいいという事ですか?

ヲザキさん:
どんどん進化していけばいいんですよ。カンパニーやアーティストとして活動していく中で、きちんと積み上げて活動を更新していく必要を出していく。
そこで得た新しさを申請時にアピールしないとまずいな、ていうことにつながっていくといいなと思います。

モデレーター:
恐らく制作の側も、その観点で作品を見続けることによって、自分の団体でしか出せない特徴とか活動の意義が、いろいろな言葉を知っていく中で、出来上がっていく可能性がありますね。

ヲザキさん:
芸術文化振興基金の「舞台芸術等の創造普及活動」と「トップレベルの舞台芸術創造事業」の助成金申請の大きな違いは、「トップレベルの~」は、今後3カ年、どういう計画を立てているか、その計画がそのカンパニーで具体的に成されているかなど、次のステップとして、長期展望が考えられるようになってないといけない。

≪質問(2) ≫
新規の団体は採用されにくいのでしょうか?実績のある団体ばかりが採用されているように思います。

久野さん:
正直、採択されづらいです。ある程度活動実績があるところが、実力を見せているということですので、そこは重要です。

ヲザキさん:
活動を始めたばかり、ということであれば、評価する軸が無いので確かに採択されづらいと思います。また制作者として経験が浅いと、具体的な活動に対していくら費用がかかるという計算が出来ないので、申請は出し続けることが重要だと思います。重要なのは、やはり実際の活動の状況だと思います。長くやっていれば採択される訳でもなく、緩やかにでも採択されるカンパニーは新陳代謝していると思います。

≪質問(3) ≫<
ミュージカルというのはどのジャンルにあたるのですか?

ヲザキさん:
演劇です。 ミュージカルにしかない費目(例:ミュージシャン委託、楽器賃借 等)を、ストレートプレイの費目の上に重ねて頂ければ、音楽でもなく舞踊でもなく確実に演劇の中のワンジャンルとしてカテゴライズされます。

久野さん:
私たちの場合は、ミュージカルまでに手が伸びていなく、現代演劇・現代舞踊にフォーカスしている部分が通常なので…そもそもジャンルの設定があるということがおかしいなと思うところがあります。人形劇など、なかなか採択されにくいということがあり、私たちも悩んでいるところです。

ヲザキさん:
特に最近では、これまでとは違う形の演劇が多く、ボーダレスなものが増えてきているのでジャンル分けが難しくなってきています。
一番いいのは事前に質問をするのがいいと思います。申請に際しての質問期間というものも設けられていますので、遠慮なく聞いてみるというのがいいと思います。

≪質問(4)≫
選考基準に関して。ミッションの達成率のようなものは、作品を観たときにどういうことが判断基準になるのでしょうか。
例えば、集客だったり社会的意味というものをどのように判断しているのか?

モデレーター:
セゾン文化財団さんは先ほど「新しい価値の創造」という観点だとおっしゃっていましたね。

久野さん:
「ちょっと今までで観たことない、びっくり!」みたいなことがポイントとして高いです。

質問者:
集客はどうなんでしょう?

久野さん:
集客に関しては、正直見てないです。ですので、行政が行っている助成の基準と、セゾンのような民間の基準というのは同じ言葉でもかなり違うと思います。
行政の場合は、数字で見たり、見積りや予算書などの書類がしっかり作成出来ているかが重要だったりしますが、セゾンに関しては、一体何をやるのか、何をやりたいのか、どこが新しいのか、の記述がちゃんと出来ているかどうかの配点が高いです。

質問者:
公演自体はあまり関係ないのでしょうか?

久野さん:
いいえ。セゾンでは、公演も観て、申請書に書いてあることと同じくらい本当に面白かったのか、そこはすごく厳しく観ます。

ヲザキさん:
それに対して、行政系の助成だと、役人が観てチェックするというのはマストではないようですね。時々抜き打ちで公演を観ているようですが。審査に関わっている方は観劇されても、恐らく大抵の場合、上演成果は制作者が書く報告書でしか表せないと思います。
動員に関して言えば、カンパニーの経済的な基盤、実績が見て取れますよね。チケット収入を主たる収入にしている筈ですから。3年前の文化庁の説明会で、観客が減っているということに文化庁が危機感を持っており、カンパニーが観客動員に対してチカラを入れて欲しいということを、言っていました。ですので、数字の実績…どれだけ動員しているのかも、ある基準として見られてしまうということは確かだと思います。

「あうるすぽっと」に関して言えば、動員数は、カンパニーが劇場とタイアップしたいという場合に重視します。公共ホール(行政)では、劇場の実績を示すのに客観的な数字のデータが必要で、カンパニーの動員数はそのまま劇場の活動の実績となってしまうからです。プラス、我々は劇場料を取りっぱぐれる訳にはいかないので、ちゃんと収入が見込めるかという判断はシビアな問題として考えます。
劇場を借りるときに動員数を書かされるということは、その点も見られているということを感じたほうがいいと思います。

≪質問(5)≫
例えば、再演で公演を行いたいと申請を出し交付の内定が出たが、そのあと新作作品での上演をすることを願い出た場合、その新作作品としての交付承諾(金額が減額されても)はするが、今後団体としての信頼度というものに影響は出るのか?

ヲザキさん:
公共系だと本来は交付されないはずです。助成の対象とする活動の内容が根本的に変わっているので。恐らくかかる経費も公演構造も違ってくるはずです。
今後というよりは、今回、何故、助成金が交付されたのだろうということのほうが気になりますね。

久野さん:
助成申請する際に申請書に書いたことが申請者の「これがやりたい」という目的じゃないですか。その目的自体が変わってしまうというのは、双方の信頼関係が損なわれることだと思います。申請書の内容は、変わらないということが基本的なところだと思います。

ヲザキさん:
民間助成は、個人の資産(運用益)や企業のCSRの事業費で文化事業に対して助成をしますが、企業からの助成の目的で言えば、会社の社会的な価値を上げる、株価を上げる、ということが背後にあり、その先には企業の取引先や株主などの存在がありますよね。
そういう「何を目的として企業が文化事業に力を入れるのか」ということが、制作者の視野に入っていないといけないと思います。
では公共のほうはどういう資金で助成を行うのかというと、税金ですよね。
つまり文化庁は、わたしたち申請者の代わりに、その先の財務省や国会へ「文化事業に助成するお金は社会的に必要なお金なんですよ」と代わりに説明してくれているとも言えます。なので我々制作者は、社会の様々な人に説明するという感覚で申請書を書かなければいけません。そしてその先には回りまわって自分たち国民がいるということです。

こう考えると、自分たちが自分たちの責任に於いて自己資金で活動するのと、助成金をもらうというのは根本的に社会の中の立ち位置が変わってきちゃう。
これは絶対的に大きな違いなので…助成金は決してもらわず敢えてそういう社会性を捨てた活動をするということも考え方の一つではあるんですが…助成金をもらいながら活動を続けるということは、大きな社会の枠の中に自分たちが入ってしまうのだということは考えたほうがいいです。

プラス、我々の活動やアートが社会にとってどう貢献出来るか、どんな役割を果たすか、自分たちなりに何が出来るかということは、もう一つ違う観点で制作者はやはり考えなくてはいけない。それを申請書の目的欄に反映させて欲しいと思います。

≪質問(6)≫
審査員の方は謝礼を頂いてるんでしょうか。(セゾン文化財団、文化庁共に)

久野さん:
セゾン文化財団は支払っています。たぶん文化庁も支払っていると思います。

≪質問(7)≫
自分の団体は助成金をもらっているが、公演には審査員が一人しか来場しなかった。
審査員同士で観終わったあとに話し合ったりするのでしょうか?

久野さん:
今は評価が重要だと言われていて、プログラムオフィサーとかプログラムディレクターとか、助成事業に関わる専門職のような方々が一昨年前くらいから芸術文化振興会でも雇用されており、徐々に彼らの専門性が影響を及ぼしてくるんじゃないかと期待しています。また、東京都でも専門的なプログラムオフィサーとかプログラムディレクターの制度を取り入れて、非常に優秀な専門知識を持った方々を去年から雇用し始めているので、これも徐々に変わっていくと思います。

更に、モニタリングの人たちをかなり多く雇って、東京のあちらこちらの劇場へ観に行かせいるので、名前の公表はされていなくても、審査員が観に来ている可能性は十分にあると思います。セゾンも何人かのモニターの人にお願いしていて、観に行った作品はレポートをあげてもらっているので、知った顔がいないから誰も観ていないと思うと、実はそうではないということがあるかもしれません。

観てちゃんと評価してくれているんだなと思う反面、セゾン文化財団も現在は、文化庁に申請し助成金をもらう立場になっているんですが、文化庁の方が観にいらっしゃるとすごい緊張するんですね。やっているほうは自信があるんだけど、どう思っているんだろうとすごく緊張したりして。なかなか複雑でもあるので、何が何でも観てもらったほうがいいというのは本当かな、と思ったりしますね。

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