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Next舞台制作塾オープンセミナーvol.3 「舞台芸術にとって助成金とは何か?」~助成金の目的から申請書の書き方まで~ レポート

13.09/01

2013年4月5日(金)、池袋の「あうるすぽっと」と共催で
Next舞台制作塾オープンセミナーvol.3「舞台芸術にとって助成金とは何か?」~助成金の目的から申請書の書き方まで~を開催しました。

「Next舞台制作塾オープンセミナー」は、舞台制作者の知識・スキルの共有を目的とした「Next舞台制作塾」の一環の企画であり、塾生以外も参加できる単発の講座です。
今回は、あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)との共催で、「助成金」がテーマ。関心が高いトピックということもあり、63人の制作者、アーティストが参加しました。

進行は、モデレーターにNextの川口聡。ゲストには、助成を行う側の視点で久野敦子さん(公益財団法人セゾン文化財団プログラムディレクター)、現在は、共催など助成申請を審査する側であり、以前はカンパニー制作として助成を申請する側だった、ヲザキ浩実さん(あうるすぽっと制作統括チーフプロデューサー)にご参加頂き、申請書を書くだけではない、制作者の職能の一端としての助成金申請について考察しました。


第一部『助成金というものは、どういうことを目的に制度として成り立っているのか』

まず「助成金」と一口に言っても、多くの人にとって「どういった助成制度があるのか」「どういった成り立ちなのか」「どうやって申請すればいいのか」など幅広い関心があると思います。
その中で今回のオープンセミナーでは、『助成金というものは、どういうことを目的に制度として成り立っているのか』をしっかり考えていくということが、申請書を書く時に重要になる点であり、同時に、この制度自体を、制作者、アーティストがどう今後も活かしていくのかを考える上で、重要な点だと思います。


イントロダクション:舞台芸術の「公共性」

まず、近年、助成制度が大きく拡充した背景として、舞台芸術の創作や表現は、「公共性」を持った活動であるという認識が高まってきたことが挙げられます。
以前は、「公共性」というと、道路とか、橋とか、あるいは公園とか学校、病院といった主にインフラ設備が、社会の中で「公共性」をもったものと認識されていました。
ところが、インフラと同様に、舞台芸術も、人が社会を構成する上で、想像力を養ったり、豊かな発想を得るために、社会に必要なものだと考えられてきています。

それは、例えば日常生活においてだけでなく、2011年3月11日の東日本大震災の緊急時に、多くの人がショックを受けたり、絶望感にさいなまれたりしたことに対して、作品の上演や、ワークショップ、アートを媒介にしたコミュニケーション活動などの、アーティストの創作や活動が、大きな励ましになったり、共感を呼んだり、あるいは浮上したさまざまな社会的問題や課題を考える機会になる、あるいは現代社会の矛盾を問いとして突きつけるという中に、衣食住だけでない、芸術の「公共性」というものがあったのではないかと思います。

一方で、舞台芸術をはじめとする文化・芸術には、いくつかの課題があります。
・緊急時に、どういう役割を果たしたか、誰の役にたったのか、何が有効で、何が有効でなかったのかが、なかなか見えにくいということ。
・舞台芸術はどうしても、ある特定の時間、特定の場所に限定した表現活動になるので、万人があまねく「公共性」を享受するとは言い難い。

だからこそ、助成を受けて舞台芸術活動を行うということは、「個人・団体がその活動の意義・目的を、社会に説明していく」義務が生じると思います。
また、社会的な活動として、公的助成を受けて活動するのであれば、「予算や使途を明確にし、財務状況を明らかにしていく」必要があります。

同時に、日本は今、長期的な構造不況下にあって、国が文化・芸術に投じる予算というのも非常に厳しい状態になってきている。助成制度というものが、存在し続けるというのが前提ではなく、助成制度そのものをどういう風に活かして、舞台芸術の振興や発展に役立て、ひいてはどう社会に還元していくのか、という視点で考えることが重要だと思います。

「日本における助成金制度の歴史と背景」 担当:藤原顕太(Next舞台制作塾事務局) ※PDF資料


「セゾン文化財団」の助成事業の経緯

■久野敦子さん(公益財団法人セゾン文化財団プログラムディレクター)

こんにちは、セゾン文化財団の久野と申します。
先ほどの説明にもありました通り、助成財団にはいろいろなタイプがありまして、それぞれが異なる目的を以て活動しています。助成財団を、政府系のものと、企業系のものとそれから、民間/個人の財団と三つにわけて考えると、それぞれの社会における役割や、目的が異なることが分かりやすいと思います。

セゾン文化財団は、その三つのカテゴリーからいうと、民間の助成団体です。堤清二というビジネスマンが設立した財団です。かつて彼は、セゾングループという大きな企業体のオーナーでした。
セゾングループには、例えば西武百貨店、PARCO、ファミリーマート、無印良品などの企業が傘下に入っていました。
セゾン劇場などの劇場もありましたし、映画館、美術館も持っていました。ビジネスで成功した一方で、彼は辻井喬というペンネームを持つ芸術家でもあり、詩人であり、小説家でもありました。ですので、大変、芸術に理解があり、最初はメセナ事業として、企業の中で、芸術支援を進めていたのですが、営利を追求しなければならない企業の中では芸術支援というのはなかなか難しいものがありました。だったら財団法人を設立し、純粋に芸術を支援したいということで、100億円の基金を、個人のポケットマネーから提供し、セゾン文化財団は設立されました。

先ほどのカテゴリーの話に戻ります。、政府系の財団というと、みなさんどういうイメージをお持ちでしょうか?例えば、国際交流基金や文化庁、芸術文化振興基金などがこれにあたります。、税金で支援されていて、まじめなものでないといけない、きちっと数字の報告が出来ないといけない、あんまり危ないものはいけない、ちょっとエロいものはダメとか(笑)?

ほんとは芸術には、危険な表現や美しくないもの、そういうものがたくさんあるけれども、そういうものは政府系の助成などは、相応しくないんじゃないかなというイメージがあるかもしれません。
企業系の助成で言うと、やはり、企業のイメージを傷つけるものはいけないかもしれない。
セゾン文化財団は芸術支援のために設立された財団なので、政府系でも企業系でも出来ないような芸術支援をすることにこそ、自分たちの使命があるんじゃないかな、という考えで活動しています。

具体的なプログラムについては、募集要項を見て下さい。財団には、ミッションというものがありまして、これは、公益法人をつくるときに絶対に必要なものです。公益法人の世界では、寄付行為と言います。私たちの活動の礎になるもので、「芸術文化活動に対する支援を通して、新しい活動の創造と、人々の相互理解と促進に寄与することを目的とする」とあります。この目的を、達成するために、どんな方法があるのか、ということで、プログラムというものを作っています。


「セゾン文化財団」のプログラム

プログラムは、芸術家への直接支援、、国際プロジェクト支援、創造環境整備に関する事業への支援、、レジデンスといった柱を建てています。芸術家への直接支援というのは、35才以下をとりあえず若手と呼んでいるのですけれども、若手に対する一年間100万円の支援を二年間継続する。アーティストの芸術活動であれば何に使っていただいても結構ですよというプログラムです。
もうひとつは45歳以下をうちではシニアと呼んでいるんですが、3年間、毎年250万円から300万円を、芸術活動のために支援させていただくというプログラムがあります。これがセゾンフェローと呼ばれているものです。

かつては芸術団体に対する、3年間から6年間の継続支援をやっていたのですが、最近プロデュース公演が多く、助成対象を、芸術団体にこだわりすぎると、この助成プログラムを使いづらいのではないか、ということで、創作の中心となる芸術家の方に申請していただくという形に改めました。
助成金の使い途は、芸術活動に限り、芸術家が自由に決めて良いことになっています。
上記以外のプログラムでは、舞台芸術の活動がしやすくなるように、何か問題があったら問題解決の方法を提案するような事業を支持するようなプログラムもあります。
例えば「舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)」という新しくできた舞台制作者のネットワーク組織の設立のような事業プログラムを支援させていただいております。
国際プロジェクト支援は、海外の人たちとコラボレーションするときや、海外のフェスに参加するときに使用していただけるものです。

都営新宿線の森下というところに、スタジオが3つ、あと、ゲストルームが3部屋あって、そこを使ったレジデンスプログラムも提供しています。
なので、セゾンは、助成金を出すのと、スタジオを貸し出すのと、必要に応じてゲストルームの貸し出しをしています。

公益財団法人セゾン文化財団
http://www.saison.or.jp/


「セゾン文化財団」の選考基準

次に選考基準について説明します。
セゾン文化財団では、1年に一度公募をかけます。そしてアドバイザリーボードという6人のアドバイザーが居るんですが、その人たちに申請書をみてもらって会議でディスカッションをして、助成先を決めています。
選考の基準になるのが、「独創性・将来性・適時性・影響力・実現性」です。 どの助成財団も同じものを選考基準として挙げていると思います。
ただ、さっき申し上げた通り、ミッション・団体の目的によって読み解き方が変わってくるということが、ポイントだと思います。

例えば、「実現性」は申請した案件が実現することを約束してもらいたいということで、どこも同じだと思います。
「影響力」というのは、セゾン文化財団の場合、、新しい価値の創造、人々の総合理解の促進がミッションなので、演劇界だけではなくて、他の芸術ジャンルもしくは社会的な部分も含めて影響をあたえるような事業をと期待しています、「独創性」というところも、何を以て独創性というか難しいけれども、新しい価値の創造をミッションに謳っているので、おのずと、いわゆる「普通」の演劇はセゾンはターゲットにしていないかもなと読み取ることも可能ですね。


補足

セゾン文化財団には、舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)設立するときに助成して頂きました。
その時も、申請書を書いて、提出して、それで評価してもらうという書類上のプロセスだけではなく、その会議に久野さんや関係者の方はオブザーバーとして参加されたりもしました。どういう議論でどういうものを作ろうとしていくのか、それはどれくらい必要性があるものなのかを一緒に考えて下さいましたし、場合によっては、アドバイスもして頂きました。助成によって、今後の舞台芸術界にどういう影響を及ぼすか、などを非常に見ておられる団体だなと思います。また、劇場やシンポジウムに行くと、かなりの確率で、久野さんや関係者の方にお会いします。
それは助成申請したアーティストに限らず、多様な表現の現在地や、舞台芸術界の課題がどこにあるのか、などを観ておられるんだなと感じます。
舞台芸術は「表現」なので、申請書の書面上では見えない事もたくさんあると思います。アーティストの活動自体を直に見に行き、必要なときはアーティストや制作者と直接、意見交換を行う、その膨大な労力を惜しまず、助成先を判断して、より有効な資金の使い方を模索しておられるのだと思いました。


公演を行う団体の会計の明瞭化=“社会化”

■ヲザキ浩実さん(あうるすぽっと制作統括チーフプロデューサー)

はじめまして、「あうるすぽっと」で制作をやっておりますヲザキと申します。
「あうるすぽっと」は豊島区立の劇場です。運営しているのは公益財団法人としま未来文化財団。すなわち、豊島区が公益財団法人としま未来文化財団へ委託しているわけですね。いわゆる指定管理者制度によって運営されている劇場です。

こんなに大勢の、しかも結構経験を積まれている方も何人かお見受けするセミナーをイメージしていなかったので、もうちょっと若い方で、制作だけでなく主宰を兼ねていらっしゃる状態の方とか、これから制作者として一本立ちを目指したいという方を対象としたお話になってしまうかもしれません。

自分の経歴から申し上げますと、もともと新劇の小さな劇団の出身で、その仕事の流れで杉並区の事業で…もう無くなってしまったのですが杉並演劇祭というのが3年前まであり、その事務局をやっておりました。その間、シアター1010という足立区立の劇場の立ち上げに関わったり、座・高円寺の芸術監督の佐藤信さんが黒テントとは別に個人でやっていらっしゃる鴎座という劇団をお手伝いすることになったり、公共劇場である「あうるすぽっと」の立ち上げもやりと、ある時期は民間の劇団と公共の劇場を同時にやっていました。一昨年から「あうるすぽっと」の制作統括を専任でやることになりました。ですので、2年くらい前までは日本芸術文化振興基金(以下、芸文)の助成金申請を、みなさんと同じような立場で行なっていました。

今、「あうるすぽっと」では、自主事業をやったり貸館をやったりしていますが、貸館の中でもある要件を満たした方たちとは「あうるすぽっと」の年間のラインナップをお手伝いして頂くという形で、タイアップ公演というものを行っております。その選定などをさせていただいています。

私は、新劇劇団所属時代に、苦い経験をしています。
前任の制作者から、まだ自分自身も経験のない状態で劇団の制作担当になり、どんぶり勘定ながらも助成金を満額いただいていたのですが、ある時監査が入りまして、文化庁ではなくいきなり会計検査院が来るという経験をしました。
その経験が一番最初にあり、助成金を取るためには、まず、会社であろうとなかろうと、会計をしっかりしないといけないと思い到りました。

その後、個人のカンパニー(任意団体)でありながら助成金を取るにはどうしたらいいか、ということで芸文とか文化庁へヒアリングに行ったりしました。主宰が本来の意味でのプロデューサー…自分で身銭を切って公演をやりたい…ときに制作がどう働きかけることができるかを考え、「社団なき法人」として税務署に届けさせて欲しいと主宰にお願いしました。それに際して年間都税が七万円かかるけれども、でもそれは払って税務署にちゃんと報告をし、明朗会計であるということが公的に証明される形をとらないと絶対に助成金を取れない、ということを納得してもらいました。

つまり、主宰(アーティスト)がプロデュースの部分の責任を持つ、代わりに制作者の私は会計を勉強しますという事で、税理士さんのところへ行って勉強して、決算報告と貸借対照表を作ってきちんと税務署へ提出するという事をやっていました。


アーティストと対等に渡り合うための「制作」という職能

逆に、そこまでやると主宰者と制作は対等の立場になれるという事を、民間の劇団時代に経験しました。カンパニーのなかの制作者の立場ってそれぞれあって、リーダーシップを取ってる方もいらっしゃると思いますが、そもそも下働きだったり、役者と過ごす時間が違うので、とても孤独な仕事だったりします。

でも制作という仕事で独り立ちするためには、身につけたスキルで張り合う…主宰者と制作は大きく言えば芸術監督とプロデューサーな訳ですから、そこはやっぱり対抗できる力は必要かなと思います。

今、傾向として、カンパニーに対して法人格というものが、求められてきています。
また、さきほどの文化庁の話をすると、芸術文化振興基金には「舞台芸術等の創造普及活動」、「トップレベルの舞台芸術創造事業」という二つがありますが、特に「トップレベルの舞台芸術創造事業」というのは、一般財団法人であるとか、そういう法人格自体をもっているというのが、条件になってきつつあります。
それ以外の事に関しても、法人格をもっていないと、ビジネス的にも契約が出来ないとか、あるいは公共劇場で公演することが厳しくなってきたりとか、そういったことが、起こりはじめている印象があります。
一方で、法人格が無くても申請できる助成もあるので、そのあたりは自分たちの活動と合わせて、どこに申請していくべきかというのは一人一人の制作者が戦略的に考えていくべきところだなと感じます。

あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
http://www.owlspot.jp/

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