制作ニュース
- アートプロジェクト『BCTION』~アートで残す、ビルの記憶。
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14.09/04
千代田区麹町のオフィス街のど真ん中で、テナントが退去したばかりのビルを丸ごと活用したアートプロジェクト『BCTION』(ビクション)が、9月15日まで行われている。「今後、オリンピックや耐震対策などの理由で多くの建物が壊されていくのではないか」という社会的課題とアートを結びつけた同企画が、どのように実現したのだろうか。(編集部:芳山徹)
アートプロジェクト『BCTION』
□日程:2014年9月1日(月)~15日(月・祝)
□会場:ニュー麹町ビル(全9フロア)
□主宰:大山康太郎(美術家)、嶋本丈士(写真家、クリエイティブディレクター)
プロジェクトのホームページには「都市のデッドスペースである取り壊し予定ビルをアート空間として再利用することで、アーティストが社会に積極的に関与できるチャンスを広げ、表現の場を増やし、さらにはアートマーケットを拡大できる」という企画背景が掲載されている。主宰の嶋本丈士さんは企画成立までの経緯を次のように語った。
「発想は以前からありました。そんな中、このビルを所有管理している株式会社インヴァランス(不動産会社)の社長が自分の作品のお客様で、このビルが空くという話を偶然伺いました。すぐに企画を持ちかけたところ、具体的な企画書の提示を求められ、OKをもらうまでに何度も企画プレゼンを重ねました。単なる『廃ビルで壁画を描くストリートアート』展ではなく、『このビルの記憶をアートを用いて残していく』社会的な行為であり、その上で『未来に何を残せるか』を問うていく企画なのだと提示するに至り、ようやくOKを頂くことが出来ました」
『BCTION』の来場にはフリーチケットを予約する必要があるのだが、これも極めて現実的な折衝からの産物だという。嶋本さんは「オフィスビルという不動産物件は、不特定多数を受け入れることを前提としていないので、このような施策が必要になりました」と語る。すでに3,000人を超える申込みがあり、すぐ隣のビルの会社員の方の来場もあったという。
今回の出展者は74組を数えた。アーティスト同士の繋がりから集まったのだが、しっかりキュレーションした上で、全体のバランスなどを精査したという。作品によっては、ビルの廃材のみで構成されたものや、オフィススペースでの事件を想起させる展示などもあり、非常にバラエティーに富んでいる。嶋本さんは最後に次のように語った。
「『BCTION』とは、一つの『ACTION』が、Bという次のアクションを促すような、クリエイティブが連鎖して膨らんでいく様子を表現しています。展示は9月15日までですが、物件引渡し期限の9月末までには、この場所でのPVの撮影や、演劇2団体のイベント実施なども予定しています。またこのビル(築45年)は解体される予定なのですが、そこまで含めて、ドキュメンタリーフィルムとして作成するプロジェクトも走っています」
今回の展示を拝見し、かつて同じようなオフィスビルで過ごした自分の記憶と、このビルに眠る記憶、そして参加したアーティストの記憶が混ざり合うような、不思議な感覚に陥った。「場所」というものが人に影響を与える力を、アートの力を用いて追体験することができるプロジェクトでもあるのかなと感じた。
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