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日本凱旋公演スペシャルトーク『マハーバーラタ~ナラ王の冒険』

14.08/23

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日本の演出家による現代演劇作品としては20年振りに、アヴィニョン演劇祭の公式プログラムに招聘された『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』の報告会が19日、東京芸術劇場にて行われた。同公演を演出した宮城聰さん(SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督)、聞き手に演劇評論家の長谷部浩さん(東京藝術大学教授)が登壇。濃密かつ様々な内容が語られたトークイベントであったが、その中でも「ストライキに伴う上演中止にどう対応したか」「芸術監督に求められるものは」というトピックに絞ってレポートする。(編集部:芳山徹)


『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』日本凱旋公演スペシャルトーク
□ 日時:2014年8月19日(火) 19:30~21:00
□ 会場:東京芸術劇場(ギャラリー2)
□ 主催:KAAT神奈川芸術劇場/共催:SPAC-静岡県舞台芸術センター/協力:東京芸術劇場

同報告会は、現地で立ち会った長谷部さんが「アヴィニョンで熱狂的に迎えられ評価されたという快挙を体感し、これは大変に価値のあることではないかという印象を持った。しかし日本に帰ってみると今一つその感じが伝わっていないのでは」と感じ、企画提案したという。

『マハーバーラタ』が上演された、アヴィニョン演劇祭メイン会場「石切場」(撮影:新良太)
『マハーバーラタ』が上演された、アヴィニョン演劇祭メイン会場のひとつ「ブルボン石切場」(撮影:新良太)

<ストライキに伴う上演中止にどう対応したか>
今回の公演では様々なハプニングが起こった。7/12の公演は、アンテルミッタン(舞台芸術・視聴覚産業に携わるフリー労働者)の失業補償制度に関するストライキ活動の影響により公演中止となった。それを受けて同日20時より、アヴィニョン法王庁前広場で抜粋版のパフォーマンスを行い、現地では大きな話題となったという。

「ストライキのことは準備段階から耳に入っていた」という宮城さんは「右往左往せず、アンテルミッタンのアの字も出さずに準備をした。アーティストとしても芸術監督としても強いシンパシーを感じている、フェスティバルディレクターのオリヴィエ・ピィにポジティブなエネルギーを送ることだけを考えていた」と語る。7月11日にストの決議がなされ、上演会場である「石切場」のテクニカルスタッフも多数決で上演中止を決定した(会場ごとにその判断は委ねられていたという)。宮城さんはその前後に彼らとミーティングを持ち、「皆さんの価値観からストライキという手法を選ばれるのであれば、それを全面的に支持します」と伝えたところ、それに対して「じゃあ宮城さんたちはどうしますか?」と逆に聞かれたという。

宮城さんは言う。「創作活動が危険にさらされていると考えた際の対応として、ストライキという手法で抗議するという判断は、自分たちの価値観からは非常に遠いということと、会場が使えないのであれば別の場所でパフォーマンスをしたいと伝えました。彼らは皆、面白いと肯定的にとらえてくれた。ディレクターのピィも、『どのような判断であれ、宮城の判断を尊重する』と連絡をくれました」

「それが『スト破り』と受け取られてしまうことが無いように、パフォーマンス前に“ステートメント”を読み上げました。自分たちにとって演劇を上演するということは、私たちを生かしてくれている外部世界全体に対する感謝であり、それらを慰撫する行為でもあるということ。上演というのは観客と約束しているだけにとどまらず、それら外部世界と約束していることでもあるので、たやすくキャンセル出来るとは感じられないと伝えました」

長谷部さんは「それが受け入れられるためには、伝え方が十全に身体的でないといけないと思って、ステートメントと、その後に続く円座でのマントラ読経(パフォーマンスの前に行われた)など、非常に戦略的に計算された戦いだった」と印象を語った。宮城さんは「上演そのものを止めることは出来ないというのは、非常に素朴な実感だったのです。それをいかに伝えるか、どうやったら敬意をもって認めてもらえるかを考えました。その際、(現地の)テクニカルと意見を交換していたことは非常に役にたって、パフォーマンスの前に行った所作は、彼らが面白がって提案してくれたことでもあるんです。彼らは全員、自分たちのパフォーマンスに立ち会い、手伝ってくれました」と語った。

<芸術監督に求められるもの>
今回のトークの最中、長谷部さんから「公共劇場の芸術監督になりたい、と考える若い演出家は多いと思うのですが、実際のところはどうなんでしょうか?」と問いが投げられた。宮城さんは「今後は、予算面/人事面でも判断できる芸術監督が増えていかないといけないと思っています」と語る。

「しかし、特にお金の感覚みたいなものは俄かにはつかないので、なんといっても集団をやるべきだと思います。集団を運営した実績のない人には、危なっかしくってどの自治体も頼めないだろうと思う。もしくは『名前だけ貸してくれれば』となってしまう。今にして思えば、ク・ナウカという劇団をやっていたことが、自分が芸術監督を続けていられる、ほぼ95%くらいの理由だと思います。集団というものが面倒くさがられていることが、今日の演劇界において一番の心配ごとです」と、思いを明かした。

◎インフォメーション◎
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』KAAT公演(9/12~13)

◎関連サイト◎
『マハーバーラタ』 アヴィニョン公演|SPAC-静岡県舞台芸術センター


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