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学校は「演劇ワークショップ」をどう活用するのか?世田谷パブリックシアターの事例から

14.08/05

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年々増えるワークショップの依頼

巡回団の活動を担当する、世田谷パブリックシアターの田幡裕亮さんによると、「学校に我々を呼んでくださるのは、ワークショップや演劇に興味があって意欲的な先生がほとんど」。数年前までは、先生の要望を聞いてあとは劇場側に一任してもらいワークショップを進めてきたというが、ここ数年は先生と事前に相談する時間を多く取ることで、活動の目的や内容を共有することを行ってきた。その結果、実施後の満足度が上がり、複数回にわたる実施の依頼が増えたり、同じ先生から継続的に依頼がきたりするようになったという。

現在、巡回団を担当する劇場スタッフは3名、劇場と契約を交わす進行役は7名。「最初のころは先生からの認知度も低く、年間を通して10校実施できればよかったほう。それが右肩上がりに依頼数も増え、現在では依頼に応えるのがやっと」。巡回団は、現場の先生からの依頼があってはじめて成立する活動だ。依頼数の増加は、それだけ劇場の取り組みが学校や地域に受け入れられ、評価されてきていることの現れだろう。

継続を可能にした「進行役」の存在

世田谷パブリックシアターのワークショップの基本構造は、「劇場(主催者)」「参加者」「進行役」の三者からなる。「この10年、進行役の富永圭一さん、すずきこーたさん、柏木陽さんと常に相談しながらやってきた。彼らは相当な時間と手間を割いてプログラムを考えてくれる。彼らがいてくれたから、今の我々が活動できている」と田幡さん。昨今、ワークショップという言葉は広がりをみせ、全国の公共ホールでも市民を対象としたさまざまな事業が開催されている。その第一線をいく同劇場の「進行役」が担ってきた役割は大きい。田幡さんも「現場ごとにいろんなやり方がある中で、『世田谷パブリックシアターで行うワークショップとは何なんだろう?』ということを進行役の3人がずっと一緒に考えてきてくれたから、巡回団も10年続いてきた。そうした姿勢は次の世代にも作用し、劇場と進行役がつねに一緒に考え、話をするという今の環境がある」と振り返る。

では、劇場の役割とはなんだろう?「劇場が間に入って先生方の希望を叶える、ということだけではだめだろう。主催者として学校に行くのは劇場。世田谷パブリックシアターという区の劇場がなぜいくのか、地域のためになにをすべきなのか、その意味を専属のスタッフである我々が考え続けていかなければいけない」。

学校があるかぎり、活動も続いていく

巡回団の活動では、いつも「遊びと学習のバランス」を保つことを心がけているという。「先生方はワークショップの2時間で子どもたちが何を得られるか?それを他の時間にどう活かせるのか?といったことを常に考えている。一方で、ほとんどの子どもは意欲的に参加するものの、中には参加したくない子ども、集中しづらい子どももいる。学校の授業としてワークショップを実施しているが、我々は進行役、先生方と相談しながら、教科の学習として一定の学習到達を目的とするだけではなく、遊びの中にも学びがあることを発見できる活動となるよう、『遊びと学習のバランス』の取り方には細心の注意を払ってきた」。瞬時の状況判断とバランス感覚が求められるが、「呼ばれて行く」のではなく「呼ばれたらまず相談する」ことを信条としてきた巡回団のきめ細かい活動が、それを可能にしているのだろう。

田幡さんは、ワークショップを行う前にはいつも「学校と劇場は従姉妹みたいなもの」と子どもたちに話すのだという。「我々は、学校を『劇場の外』だとは思っていない。ホームグラウンドは劇場だが、学校も『第二のホームグラウンド』だと思って活動している」。学校も劇場も、建てたところは同じ世田谷区、みんなが使える場所で、誰が来てもいい場所。「そういう意味では学校も劇場も本来は同じはずなんです」。

8月25日(月)、26日(火)には、幼稚園、保育園、小学校、中学校、高校などの先生を対象にした『先生のための演劇ワークショップ はじめのいっぽ と もういっぽ』と題したワークショップも開催される。「こうした活動は、10年20年やってみてはじめて成果が見えてくる。一人でも多くの方に来ていただきたいが、我々の手応えよりもまずは先生方自身の手応えが大事。体験を学校現場に持ち帰っていただき、どう活かしてもらえるかが鍵」。

学校がある限り、巡回団の活動も続いていく。

◎関連サイト◎
先生のためのプログラム2014『先生のための演劇ワークショップ はじめのいっぽ と もういっぽ』|世田谷パブリックシアター

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