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第1回ゲスト:三好佐智子(有限会社quinada代表/「サンプル」「ハイバイ」)

12.02/01

舞台制作のトップランナーに、これまでの道のりと仕事観を尋ねる新シリーズ“制作者のキャリア”。第1回目のゲストは、「サンプル」(主宰:松井周)と「ハイバイ」(主宰:岩井秀人)という2つの劇団を手掛ける三好佐智子。タイプの異なる2人の人気劇作家から絶大な信頼を受ける制作者が語る「起源」「挫折」「信条」とは?

仕事のノウハウは一般企業で学んだ

――演劇と出会ったきっかけは?

小学校の時に演劇部の公演を見たのが最初ですね。劇団四季とか歌舞伎とかバレエとか家族で良く見に行っていました。

――わりと小さい時から身近に演劇がある生活だったんですね。作る側に携わるようになったのはいつ頃からですか?

中学、高校で演劇部に所属してて脚本・演出をやったりしていました。

――そのまま大学でも演劇を?

そうですね。早稲田の第二文学部に入学して、昼も夜も演劇。役者をやったこともあるのですが、すぐに向いてないことに気づいて。その頃はまだ早稲田で「制作」というポジションが確立されてなくて、立て看板を作ったり、折り込みをしたりしているうちに何となく「こっちの方が自分には向いてるかも」と思い始めました。

――師事するような人は誰もいなかった?

教えてくれる人はいました。「制作」みたいなことをやろうとしていた人がいて、その人から色々教わりました。あと、その頃「ポツドール」の制作も少しやっていたので、そこで覚えたことはたくさんあります。

――なぜスロウライダーの制作を?

劇作家と出会った時、彼はただ強烈な存在感のある、俳優でした。その後上演した彼の舞台作品の戯曲が素晴らしくて、次の作品をやるために「制作」が必要で、それで「制作」になりました。また、主宰と劇作家を兼ねる必然性を感じなかったので、自分で「制作」と「主宰」を兼任して劇団を立ち上げたという流れです。

――大学卒業後は一旦就職されていますね?

ちゃんと仕事をして、食べていかないと生きていけないと分かっていたので、一旦就職をしつつスロウライダーをやっていました。その会社が一部上場しているベンチャー企業なんですけど、普通の会社で3年掛かることを1年で覚えなければいけないような、すごく過酷な会社で。「月420時間ぐらい働いて週5日は出張でホテル滞在」みたいなハードな生活でライフが極限まで減りました。そこでいろんな仕事のノウハウ、営業や広報の基礎は叩き込まれました。で、1年半で一度退職して、次の会社に転職したのです。

――あ、転職してるんですね?それはどんな仕事だったんですか?

ドイツ系化学企業の広報部で、仕事の内容は広報誌を作るとか、新聞・雑誌の取材対応とか。社員旅行や忘年会の幹事とか”ショムニ”みたいな要素もあって幅広かったです。「制作」と共通する部分が多かったかも。フレックス制で、休暇が多かったこともあり、いったん減ったライフを回復できたし、英語をビジネスで使うきっかけになりました。また上司が優秀な人だったので、その人から徹底的に仕事方法を仕込まれたっていうのは、今の自分の基礎になっています。よく、あの人ならこの作業、秒速で終わっているだろうとか、ここであきらめて寝たりしないだろう、とか今でも仮想の彼女をトレースしたりしています。それから、外資系で働いている日本人や外国人の「プライベートを充実させるために、働く」というスタンスに強い影響を受けました。例えば部長クラスの人が子供を送って10時に出勤したり、お迎えのために15時に退社したり。1ヶ月休暇をとって海外旅行する人や、1年休職して絵画の勉強をする人がいたり。当たり前のようにプライベートを優先している。日本の企業だと「超働く=かっこいい」部分がありますが、その会社はドイツ系だということもあって全く違いました。以後、「幸福で健康な生活」が(キナダのコンセプトにもありますが)自分にとって不可欠なテーマとなりました。

――当時、すでにご自身の会社(有限会社quinada)を起業されていたわけですから、将来的には独立することを前提で働いていたんですね?

いや、迷っていたと思います。「演劇だけでは食べていけない」のは自明で、転職で演劇と仕事を両立できるベストな環境に変わったわけだから、やめる必要がない。当時は「40歳、50歳ぐらいまで働いていくだろうな」って思っていましたね。

――そこにはどれぐらいいらしたんですか?

4年半ぐらいですね。

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